教育研究所
No.298 自分を大切に(2010年10月20日)
亀山殿の御池に大井川から水を引き入れるおり,大金を使い大井の土地の民に水車を作らせたが,うまくいかなかった。
そこで土地の専門家に作らせたところ実に見事に仕上がった。(徒然草第五一段)。
この段の末尾に,「万にその道を知れる者は,やんごとなきものなり」という一文があります。
何事につけてもその専門の道をわきまえている者は,尊いものだという意味です。
これからの時代を担う中・高校生においても,「これだけは,誰にも負けないというものを持って,世の中で必要とされる人,社会に認められる人」になって欲しいと願うのは,私たち教師だけではないと思います。
今年度も,9月16日を皮切りに,就職を希望する高校生にとって大切な採用試験が始まりました。
すでに内定通知を手にした生徒もいるかと思いますが,企業の求人には厳しいものがあります。
進路指導の先生たちのご苦労もひとしおのことでしょう。
生徒たちは,自分の将来を見据え,面接試験に備えて,挨拶や礼儀作法等を学び,学校生活で頑張ったことなど質問に答える練習や企業に対する志望動機を心を込め丁寧に履歴書にしたり,進学を希望する生徒たちは,大学入試センター試験の申し込みを終え,いよいよ本番に向けて対峙している時期でもあります。
生徒たちの真剣な思いと準備してきた努力が,十分発揮できるように心から祈るところです。
人が自立し自分の生き方を探し求めることは,たやすいことではなく,時間がかかります。
私は,これまで授業やホームルーム,あるいは生徒たちとの懇談の中で,「自分の能力や適性に合った職業が必ずあるから,その中から将来の仕事を見つけなさい」と話してきました。
学校生活で,自分の一番好きなこと,得意なことを見つけて伸ばすとともに,自分の良さを自分で発見して,それを個性として大切にして伸ばしていくことが最も重要だからです。
そのためにも,「自分自身を大切にする」ということが重要です。
自分を大切にすることは,健康に十分留意するとともに自他の生命や精神を尊重する心をもつということです。
他人に迷惑をかけなければ何をやってもよいという人がいますが,私は,それは間違っていると考えます。
自分を粗末にしているのではないかと思うからです。
自分を大切する人は,他の人の考えに耳を傾け,その存在を大切にしているといえるからです。
十人十色といいますが,人の生き方は様々です。
一人一人の生き方が違うから面白いのです。
価値観が多様化している現代社会だからこそ,人まねでなく,自ら考え判断し行動する。そして自ら責任を持つということが,大切になる所以です。(H・H)