教育研究所
No.296スギとオギ(2010年10月06日)
10月に入りようやく秋らしくなってきました。
あの猛暑の夏を思い起こすと,心地よい風に幸せを感じます。
秋といえば連想するのは,紅葉であったりいわし雲であったり柿の実であったりしますが,中秋の名月を忘れることはできません。
午後6時ごろ東の空から出てくる満月が,南の空にかかるころの神秘的な風情には息を呑みます。
今年(注:2010年)は,9月23日でしたが,10月の23日も満月ですから,晴れれば名月を堪能できることでしょう。
「お月見」に欠かせないのがお団子とススキです。
関東地方では,8月末頃にススキの穂が出始め花が咲きます。
ススキはイネの仲間ですからイネの花によく似ています。
1つの花から3個の細かい雄しべが外に飛び出し,風に揺れて花粉を振りまき雌しべに届けます。
お月見のころは,白い穂はすでに果実になっていてこれも風情のある装飾になります。
白い穂をまじまじ見ると,穂の中の1本の枝に多数の果実が見えます。
1つの枝に20~30個の果実があり,1つの果実はお米を細長くした形で長さ3~4mmぐらいです。
この小さな果実の先端に1本の長い針のような毛が付いていて,基のほうにはタンポポの毛のような冠毛が多数あり,風の強い日に遠くへ飛ばされていきます。
昔は,萱ぶき屋根をふくために大量のススキが必要で,村の近くの山野にススキを育てる場所を設定し育てていたものです。
現在は,その必要がなくなりススキの原を見ることが少なくなりました。
それでも,利根川や荒川,多摩川などの河原や箱根の仙石原などで見ることができます。
風になびくススキの穂の様子は,壮観と言えるでしょう。
ススキによく似ている植物にオギ(荻)があります。
東京都杉並区の「荻窪」などの地名になっている植物です。
高さは1,5~2mぐらいで,細長い葉や白い穂の様子はススキによく似ています。
河原などで両者を見ることがありますが,見分けるのに苦労します。
しかし,よくよく見ると違いに気付きます。
先ず,茎が地面から生える生え方が違います。
ススキは10~20本の茎が1箇所に集まって生えますが,オギの茎は集まることなく1本ずつ離れて生えます。
ススキの茎は1つの根から集中して出て大きな株になりますが,オギは地下の茎が横にはい,節から茎を出すために1本1本の茎が離れて地上に出てきます。
生える場所も異なるようです。
ススキは,河原の中でも乾燥したところに生え,オギはくぼ地のやや湿ったところに生えています。
両者の小さな果実を比べると,ススキの果実の先端には1本の長い針のような毛が付いていますが,オギにはこの毛がありません。
JR中央線荻窪駅のホームの北端に地名の由来の「荻」が植えてありますので,見ることができます(5月~11月頃が見頃です)。
両種とも,生活科の草花遊びや理科の3~4学年の「植物の成長」の教材として,適していますので活用してください。(H・Y)