教育研究所
No.292ハナイカダ(2010年08月09日)
小学校の1~4学年の子どもたちを公園や雑木林などの野外の学習に引率すると,子どもたちは動植物に大変興味をもちます。
ひとしきり自由に探したり遊んだりした後,先生は,子どもたちの興味を大切にしながら,今日のねらいは「草花のおもちゃ作りの活動を中心にしよう」とか「昆虫の種類による食べ物をさがそう」とか「植物の種類による形や色,大きさの違いを見つけよう」とかして,限りがある時間を有効に活用すると思います。
学習活動の中で子どもたちが特に興味をもつものは,見たことがない動物や蝶,トンボ,花や実など,これまで経験したことのなかったものや現象に集中します。
葉の上に花が咲く「ハナイカダ」などは,運よく見つけた子どもは有頂天になって喜びますし,見せられた子どもたちは,なんて不思議な面白い植物だと感心しきりになります。
「葉の上に赤ちゃんが乗っている」とか「おままごとのお皿にご馳走が乗っている」
などと言います。
子どもたちの今までの経験では,植物の葉と花はしっかり分かれた別々のもので,葉の上に花が合体するとは考えてもみないことなのです。
どうしてこうなるのと不思議がります。
子どもたちには,次のような観察をするよう進めます。
花が付いている部分の葉の脈の太さを見るようすすめます。
子どもたちは,花が付いている部分から葉先の葉脈は細く,花が付いている部分から葉の基部までの葉脈は,太いことに気づきます。
葉の基部までの葉脈が太いのはなぜかと聞きます。
「花に栄養をたくさん送るので太い」とか「花を支えるために大きい」とか言います。
そこで,枝と葉の間から出ている「ノイチゴ」などの普通の花を見せて比べます。それでもなかなか気がつきません。
やがて,子どもたちは
「ノイチゴは葉についてないのに,ハナイカダはくっついている」
「はじめハナイカダも離れていたのかな」
「くっつくわけないよ」
「いやわからないよ,前のことは分からない」
などと言います。
目の前の事実をどう解釈するか話し合うことは,2つの要因を結びつける関係を考えたり,もともとはどういう状況だったのか推論したりする力を育てるのに大切な機会です。
「ハナイカダ」の花が葉の上にあるのは,花の柄と葉の脈がくっついたことが原因です。
まとめの話として,子どもたちにこの話をすると,「やっぱりそうだったのか」とか「エ~,信じられない」とか言います。
自然界の不思議さや面白さに感動する経験や,冷静に事実を解釈する経験は科学的な思考力や判断力を育てることになります。
「ハナイカダ」は,アオキやハナミズキの仲間で人里の雑木林などの身近にあり,雄の木と雌の木が別々に生えます。
いかだに花が乗っているとたとえて「ハナイカダ」と名づけたそうです。
ぜひ,理科や生活科,総合的な学習の時間に子どもたちを野外に連れ出し,子どもたちの人格にまで影響を与える学習活動を試みてください。(Y・H)