教育研究所
No.286 ハンカチの木(2010年05月07日)
桜前線は青森から北海道まで進み,北国の人々は爛漫の桜を堪能していることと思います。
日本で最も人気のある木は,何といっても桜です。
桜の中でも「ソメイヨシノ」がもてはやされます。
その華やかさや品のよさは,他の追随を許さないものがあります。
続いて「ヤマザクラ」や「オオシマザクラ」「サトザクラ」が咲いて桜の季節は過ぎ去って行きます。
桜の華やかさにはかないませんが4月下旬から5月にかけて,ひそかに人を引き付ける木があります。
それは「ハンカチノキ」です。
あまり聞いたことのない木ですが,愛好者の間では有名な木であって,植栽地の東京都の新宿御苑や小石川植物園には,この時期多くの人が訪れます。
どんな木かといいますと,高さは8~12Mぐらいで,一部の葉が緑色から白色に変わりハンカチのように見える木です。
ハンカチのように見える葉は,長さは20~25CMで幅は10~12CMのものが1枚あり,それより小さいものがもう一枚あります。
なぜ緑色の葉が白色になるかということですが,開花の時期と関係があります。
実はこの時期に花が開きますので,花粉の運搬のために虫を引きよせる必要があります。
ところが,花は小さな目立たない花で,たくさん集まって球状になっていますが,虫たちに見つけてもらうのはなかなか難しいことかと思います。
そこで,球状の花のすぐ近くの2枚の葉が,白色に変化して虫を引き付けるのではないでしょうか。
白色になる葉は,花のすぐ近くの葉だけであり,他の葉は変化しません。
また,山地に生える「マタタビ」というつる性の植物や沼地に生える「ハンゲショウ」という植物も同じように花の時期に葉を白色に変化させ,花が終わると緑色に戻って光合成を再開すると見られています。
緑色の葉の中でところどころに白色のハンカチ状のものがひらひらしている様子は,優雅にも見えますし不思議な感じにも見えます。
また,「ユウレイノキ」とも呼ばれているそうですが,夕方薄暗くなってから見ると,この名がぴたりと当てはまるのかもしれません。
ハンカチノキの原産地は,中国の四川省や貴州省,雲南省北部,河北省西部の標高1800~2200Mの高地で,18世紀にフランス人の神父で植物学者のアルマン,ダビッドが発見したそうです。
学名はダビッドの名前を記念してDavidiainvolucrataと名づけられています。
独立したハンカチノキ科とする研究者もいますが,ミズキ科とする人もいます。
最近の分子分類学ではヌマミズキ科に入れています。
現在は世界各国に植栽されていて,私たちの身近でも神奈川県の大船フラワーセンターや埼玉県の狭山都市緑化植物園,足立区立中央公園,千代田区立神保町出張所(ひまわり会館)前などで見ることができます。
もし,学校にハンカチノキが植えられたら,子どもたちは何に例えるでしょうか。(Y・H)