教育研究所
No.284 たいへんだ!オタマジャクシの水がない(2010年04月09日)
この春,小学校に入学したばかりの孫が,
「たいへん,たいへん!オタマジャクシが死にそうだ!水がない」
と,血相を変えて私に駆け寄ってきた。
「本当?きのう,一緒に水を替えたばかりなのに・・・」
と,50cm四方,深さ20cmほどの小さな衣装ケースを代用した池のところに行ってみた。
確かに池の水は,ほとんど干上がっていた。
わずかに残った小さなちいさな水溜りに,100匹ほどのオタマジャクシが押し合い,へし合いしていて,孫のいうとおり大変な状況であった。
「ね!ぼくのいったとおりでしょ!」
「おかしいな?昨日,水をいっぱい入れたはずなのに!」
「さくらの花のみつをすいにきたメジロが,のどがかわいて飲んだのかね?」
「仲よしのメジロがいつも2羽来るけど,こんなに沢山は飲まないでしょ」
「ハトも来たんじゃないの?」
「ハトが来たとしても,全部なくならないと思うよ」
「じゃー,どうして水がなくなったの?」
「どうしてかね?」
あたりを見渡してみると,1枚の濡れ雑巾が目に入った。
「この雑巾,どこにあったの?」
と孫に聞くと,
「オタマジャクシの池にひっかかっていた」
ということであった。
「分かった!水を汲み出した犯人は,この雑巾だ!」
「ぞうきんは,手がないのに,水はくみだせないよ!」
「じーじが,雑巾を使って水を汲み出して見せるよ」
といって,バケツに水を入れ,高いところに置いて,渕に雑巾を引っ掛けた。
暫らくして,雑巾から水が,ポタポタ・・・とたれてきた。
「あれー!」
と,孫はびっくりして眺めていた。
「ぞうきんが,水道みたいになったんだね」
「よし!ぞうきんで,オタマジャクシに,水をプレゼントしよう」
と,雑巾からポタポタ落ちる水で,池に水を入れだした。
相当な時間がかかって,オタマジャクシがすいすい泳げるくらいに水がたまり一安心,えさをやり,水草を整えた。
「○○くん,夕ごはんだよ」
という母親の声に,
「よし!これでもうだいじょうぶだ!」
と,勇んで家の中に駆け込んでいった。
風呂に入る時間。
2階から降りてきた孫が,
「じーじ。ぞうきんが,さいほうになったんだって,お父さんが教えてくれたよ」
という。
翻訳するとどうやら「サイフォン(siphon)の原理で,雑巾の繊維の間を水が伝わり落下した」ということのようであった。
物干しから風で舞い降りた雑巾が,身近な科学を認識させてくれた我が家の小さな事件でした。
そのオタマジャクシは元気いっぱいで,孫は,今度は共食いをしないように,えさを沢山あげて頑張っている。
かえるになったら,卵を取ってきた本物の大きな池に放しに行くことになっている。(H・K)