教育研究所
No.272保護者を巡って(2009年10月07日)
保護者会について,いろいろな先生に取材してみました。
教師と保護者の関係を見つめ直し,再構築するヒントがたくさんあります。
プライバシーに配慮して紹介します。
【昭和40年ごろの保護者会で】
新規採用教員の初めての保護者会のことです。
K先生は担任として,汗だくになって,学級の目標や指導の重点,保護者にお願いしたいことを説明しました。
皆さん,じっくり聞いてくれ,その上「先生,初めはうまく行かないものですよ。応援するからがんばってください」とエールを送ってくれました。
そのときの保護者と子どもとは,今だに付き合いが続いています。
【昭和46年ごろの保護者会で】
学級の子どもが複雑骨折をしました。
保護者が留守だったので,子どもの話をもとに布団を持ち出し入院させました。
夕刻,保護者から感謝の連絡がありました。
その後の保護者会で,「子どもがけがをして迷惑をかけ,いろいろお世話になりましたが,布団は客布団でした」と,苦情に近い後日談を聞き恐縮したものでした。
【昭和50年ごろの保護者会で】
前担任に比べて,子どものノートや作文,ドリルの点検やコメントが少ないとの注文を受けました。
教育実習生が7人来ていました時期でしたので,私がそれなりにていねいに点検しコメントをしていたことを見ていました。
彼らが弁護しようといきり立つのを制して,「申し訳ありません。これからもっと努力します」と応えました。
【昭和60年ごろの保護者会で】
小学校教員でもあったある保護者に,「うちの子どもは小学校のときとてもよくできたのに,中学生になったら成績が落ちた。
中学校はだらしがない」と,まくし立てられました。
あまりの剣幕に,当該の生徒が授業中の態度が悪く,忘れ物が多く,復習もほとんどして来ないことが言えませんでした。
でも,言うべきでした。
【平成5年ごろの保護者会で】
保護者会で,「先生ガールフレンドいるの」と尋ねられました。
むっとしましたが,親しみを表現したのだと呑み込み,「皆さんほどすてきな人ではないけれど・・・」と,返答をしました。
【平成15年ごろの保護者会で】
それとなく聞いていたら,廊下で団体交渉らしき打ち合せをしていました。
保護者会が始まると,なんと交渉相手は私でした。
何人もの母親が次々と要求を出し,一つ一つ確認をしていくのです。
本当に驚きましたが,冷静にいなすことができました。
【平成19年ごろの保護者会で】
「担任のいじめに対する対応が良くない」と糾弾されました。
その際,保護者は,教育相談室に確認し,確信を持って抗議したとのことでした。
【平成20年の保護者会で】
ある保護者からさんざんクレームをつけられました。
思い込み,身勝手,理不尽なことばかりで,他の保護者も唖然としていました。
「私って,モンスターペアレントかしら」と最後に聞かれたので,思わず「そんなことありません」と言ってしまいました。
【今年の保護者会で】
新任の私は,保護者会のたびに隣のベテラン教師と比べられ糾弾されます。
ある保護者が,「先生は新任だし,一生懸命がんばっているのだから・・・」と助け船を出してくれました。
「先生はこれから育っていくといっても,私の子どもの5年生は今しかないの。
困ります」
と,きつくはねのけられてしまいました。(H・K)