教育研究所
No.267江戸しぐさ(2009年07月22日)
地下鉄のホームに,「江戸しぐさ」の例が掲示してあった。
東京のある公立小学校では,江戸しぐさについて学級指導で取り上げているそうだ。
江戸しぐさといわれる典型的なのを紹介しよう。
〈蟹歩き〉:
狭い道で,2人の人が対面したとき,互いに道路の真中をはさんで横になりすれ違うことである。
横になって互いに譲り合いながらすれ違う様が,まるで2匹の蟹が歩いているように見えることからこう呼ばれるのであろう。
今に置き換えると,人に限らず,すれ違うときは,互いが端により譲り合いながらすれ違うということになろう。
道路いっぱいに広がって歩く人たち,歩道の真中を歩いて前からきた人を無理やりよけさせる人,幼児を乗せた自転車に道を譲っても会釈ひとつしない若いママ,すれ違いざまに荷物をぶつけても表情ひとつ変えない若者,江戸しぐさという言葉を知らなくても,蟹歩きをしないまでも,何とかして欲しいものである。
「よけない,譲らない,謝らない」
が横行する日常は,どう考えても日本人らしくない。
〈傘傾(かし)げ〉:
雨の道で傘をさした人がすれ違うとき,右側の人は心持ち傘を右に傾け,左側の人は心持ち傘を左に傾けてすれ違ったら,傘がぶつかり合い嫌な雰囲気にならずにすむというものである。
これは,雨の歩道でよく体験することである。
すれ違うとき,傘傾げをする人に出会うと,なんともいえないほのぼのとした気持ちになるから不思議である。
梅雨の季節や雨の多いこの頃は特に気になるものである。
妙に突っ張らずに,互いがちょっと気を遣うだけで,両方がいい気分になる処世術は,ぎすぎすしがちな現代だからこそ身に付けて欲しいことである。
〈拳(こぶし)一つ〉:
縁台に座っている。
もう座れないと見えても,1人が拳一つずつ詰めると,何ともう1人座れるということであろう。
少しずつ譲り合うと,幸せな人がもう1人増える。
これは毎日の電車の中で体験する。
荷物を隣におき1人で二つ分の席を占領する。
二つの席の真中に座って平気で居る。
7人がけの席に5人とか,3人がけの席に2人ということはよく見られる光景である。
立っている人を,1人でも座れるようにしてあげたいとどうして気遣えないか不思議に思う。
自分だけよければよい病なのか,よそ様のことが目に入らないのか,全く不思議な光景が,西武線でも,小田急線でも,JR中央線でも繰り返されている。不思議なことに地下鉄東西線では定員通りの座り方をしていると思うのは,私だけか。
電車でおまけの話を一つ。
昔(10年前くらいまで)は,電車がホームに入ると,先に客が降り切ってから,次に乗り込んだものである。
現在は,せっかちになったのか,空いている席に座りたいのか,マナーが身についていないのか,自己中なのか,われ先に乗り込んでくる。
いろいろな人がいて,いろいろなことがあるのだが,何か,日本人は,小さな宝物をどんどん捨てているようで,「モッタイナイ」気がする。(H・K)