教育研究所
No.266「深敬」(2009年07月08日)
「私,生まれも育ちも葛飾,柴又です・・・」のせりふで有名な寅さんは,今日でも多くの人々から慕われています。
連日,観光客が柴又の帝釈天やその近くにある「寅さん記念館」を訪れ,特に土曜,日曜日は賑わっています。
映画「寅さんシリーズ」を通してみられる寅さんの人柄は,頑固で自分の意見を強引に押し通しながらも正義感にあふれ,他人から頼まれれば「嫌」とは言えず,その上,女性に甘くけんかっ早いところもあります。
外国旅行が苦手の寅さんですが,暖かな思いやりの深さを感じる人柄は,日本人の心の良さを持ち,「世界一日本人らしい日本人」とも言われています。
京成電鉄「柴又駅」の改札口を出ると記念碑「寅さん像」があります。
小さな柴又橋を渡り帝釈天参道を歩いていくと,すぐ右手に,映画「寅さシリーズ」で,寅さんの実家「くるまや」として撮影された団子屋「とらや」があります。
柴又名物の飴,羊羹,くずもち,せんべい,佃煮や木彫,民芸品などの土産物屋が両側に並んでいます。
その参道の先にある柴又帝釈天に「深敬」(法華経・上不軽菩薩品)という言葉が掲げられ,次のような説明が記されています。
「深敬」とは,深く他人(ひと)を敬うことであり,最近は,全てが自分勝手で,他人の立場や他人の気持ちとなって考えるような人間が少ない。
「相手の立場を尊重する」
そうした思いやりの心が必要である。
(柴又帝釈天山主望月日翔)
日本の子どもたちは,現実から逃避したり,今の自分さえよければ良いといった傾向がみられます。
子どもたちに,基本的な生活習慣を身に付けさせるとともに,社会生活を送る上で必要な規範意識を身に付けさせることが求められています。
自己との対話を重ね,自分自身を深めつつ,他人,社会,自然・環境と共に生きているという実感や達成感を味わわせ,人間としての尊厳,自他の生命の尊重や倫理観などの道徳性を養い,主体的に判断し,適切に行動できる人間を育てていくことが大切です。
「深敬」という言葉を心に留め,他人の立場を尊重し,他人の気持ちとなって考えたり行動する子どもたちの豊かな心を育んでいきましょう。
寅さんのような「世界一日本人らしい日本人」を目指して。(H・H)