教育研究所
No.251ベテラン教師にかける期待(2008年11月19日)
かなり前のことですが,ある新聞が「教職経験10年のベテラン教師」と書いていました。
ベテラン教師というと教職経験20年程,40歳を過ぎたころの学校を切り盛りする教師を想像するのではないでしょうか。
小学校の学級担任で言えば,1年~6年の全学年を2回程度もって12年,学校の中核的な立場,今日のスクールリーダーとして数年の経験ということを考えると,ベテランは20年程度と考えるのが妥当ではないでしょうか。
世間の目と学校現場の実感とにはズレがあるということでしょうか。
ところで,プロの世界の一つ,パイロットの社会では,ベテランとは操縦時間が1万時間を越えた者のことを言うそうです。
これに倣うとすれば教師はどうでしょうか。
小学校の年間総授業時数は,新学習指導要領では高学年で980時間となります。実際には専科等で900時間前後という場合もあるでしょう。
しかし,時間割の授業以外にもクラブ活動や委員会活動,学級での指導などを入れると,およそ1,000時間程度になるのではないでしょうか。
1万時間になるのには10年ということです。
とすれば,三十代前半にしてプロのベテラン教師になるということです。
見方を変えれば,それだけ1時間の意味が重いものであるということです。
1時間の授業の積み上げと深化が1万時間になるのであり,教師としての進歩・向上があり,ベテラン教師となるということです。
さて,このところ,時間数ではベテランではあるのですが,授業のうまい,教えることの名人先生が少なくなったように見受けます。
かつてはどこの学校にも授業のうまい先生がいたように思います。
一斉型が多かったのですが,子どもたちが授業に引き込まれ真剣に考え,協議したり作業したりする姿を目の当たりにして,その授業のよさを学ぼうとしたものでした。
新学習指導要領に基づく教育課程編成に向けて移行が行われている現在,基礎的・基本的な知識・技能の確実な習得,これらを活用して思考力,判断力,表現力などの能力や主体的に学習する態度の育成ができる授業力の更新が求められています。
時間数だけのベテランはもちろん,教えることの名人も新たな教育の方向に向けて,授業力を更新させていかなくてはなりません。
一方で,若手教師が大量に採用される時代となり,10年どころか,若手が数年で学校の中核になることが求められる学校さえ生じています。
学級崩壊・授業崩壊が後を絶たず,学校としてこれらをどう克服していくかも大きな課題です。
子どもにとって,あってはならないことです。
教師自らの意識改革,実践,研修が重要となっています。
こうした状況において,ベテラン教師,中核となる教師,スクールリーダーとなる教師にかけられる期待には大きいものがあります。
教育課程の改訂期は,学校リニューアルの機会,新たな学校づくりの最大の機会です。
どのような子どもを育てるか,そのためにどのような学校を創るかなど夢や希望を語り,教師集団が協力して教育を想像していくチャンスを是非生かしてほしいと願っています。(C・T)