教育研究所
No.240 こだわりをもつこと(2008年06月11日)
ある教師が,同僚の教師のことをこう評していた。
「あの先生には,こだわりがない。
だから,授業もおざなりで,ちっとも進歩しないし,子どもたちが,興味を示さなくなっている」と。
「こだわり」には,大きく分けて,二つの意味があるように思う。
一つは
「差し障り・些細なことにとらわれること・難癖をつけること」
もう一つは,「些細な点まで気を配ること・思い入れをする」である。
ここで,話を進めていきたいのは,後者のことである。
物事と向き合うとき,些細な点まで気を配ることや思い入れをすることはとても大切なことである。
こだわりをもって物事に当たっていれば,ていねいな仕事ができる。
細部まで心遣いされた品物ができあがるだろう。
料理であれば食べる人の立場にたった,おいしいものができてくるだろう。
こだわりをもってやっていくためにはいくつかの条件がある。
一つは,時間的,精神的な余裕が必要である。
時間に追われたり,落ち着かない気持ちでは,こだわりをもってものに対処する気持ちになれない。
次に,対象への愛情をもつことである。
対象としているものに対して,いとおしさや愛情をもっていなければ,こだわる気持ちが湧いてこない。
少しでもよりよいものにしたい,少しでも力をつけたいという思いこそがこだわることにつながる。
三つ目は,対象についてよく知り,どうすればうまくいくかの技術を心得ており,それを身につけておく必要がある。
そのためには,よき師から学ぶことである。
これまで,伝統的に培われてきた技術や知識を学び自分のものにしておくことである。
この技術や知識を身につけることは日々の絶えざる努力・訓練そして謙虚な心構えや態度がなければ不可能なことである。
その上で,自分らしい想像力,創造力を働かせて,新たなものに挑戦するのである。
教師も同じである。
対象である事がらは,教育全体にかかわる。
そして結果として子どもの成長を大きく左右する。
「授業」にこだわりをもつと,「もうこれで十分だ」という授業はないはずである。
「あの導入でよかったのか。
展開はどうか。
板書はどうか。
活動の順番はどうか。
練習問題はあれでいいのか。」
等こだわりが出てくる。
日本の教師のもっている指導力を引き継ぎつつ,進行する教育改革の中で指導力をさらにどう改善するのか。
その改革の核になるのは,教師の指導へのこだわりである。(K・T)