教育研究所
No.231 変化しつつある学校-その10-(2008年01月07日)
最近,多くの学校に見られる特徴の一つとして,「我が校の伝統」について考えようとする傾向があるように思われる。
折りしも,今年度は中学校教育60周年に当たり,全日本中学校長会も10月に記念式典を東京国際フォーラムで挙行したところである。
全国の多くの中学校でも創立記念の諸行事を開催し,生徒にも改めて,学校の伝統について考える機会を与えたのではなかろうか。
過日,A中学校から創立60周年記念誌が送られてきた。
「昔からA中学校は,校則が厳しいと周囲に言われていますが,これは改正されつつも守られてきました。
この校則が無くならないには,これまでもずっと必要だとされ,最低限守るべきものであるからだと思います。
そして60年続いたこの校則を守り続けていくことも,A中の重んじる伝統の一つであり,これを受け継がせていくことができるのは,他ならぬ私たちだけなのです。
このA中に,この時在籍できたことをきっかけに,私たちは生徒の本来あるべき姿を考え直し,改めて一人ひとりの行動・存在と協調の大切さを理解できたのだと思います。」
生徒代表の一文が寄せられている。
学習指導要領の告示を間近にし,各学校は,新しい教育の流れを創るべく総意を結集して自校の教育計画の作成に取り組んでいるところであろう。
そうした中で大切なこは,「わが校がこれまで築き上げてきたもの」をどう評価し,何を継承し,その上にどのような新たな価値を付加していくかという視点である。
「伝統は守るものである」。
「伝統は受け継ぐものである」。
ほとんどの生徒は,このような捉え方をしているであろう。
今,多くの学校に見られる「我が校の伝統」を捉え直すという伝統への回帰現象が,生徒にとって,「伝統には新たな価値が付加される」という面があり,そこに自分がかかわっていることを理解する契機となれば,大きな意味があると思うのである。(S・T)