教育研究所
No.230気を付け・前へ習え(2007年12月13日)
全校朝会の始まり。子どもたちが集まってきます。
だいたい揃ったところを見計らい,司会の先生が朝礼台に立って声を掛けています。
「気を付け―。前へ―習えっ」
子どもたちは号令に合わせて両手を前に出し列を整えます。
ところどころで列が乱れたり,お喋りが聞こえます。
「やり直し。もう一度,前へ―,習えっ」
子どもたちは再度手を挙げ揃えようとします。
「まだ揃いませんね。あと少しの人ができていません。
はいっ,これが最後になるようしっかりと整頓しましょう。
前へ―,習えっ」。
一方,学級担任の先生は列の中に入り,整頓出来ない子どもに注意したり手の挙げ方や伸ばし方を指導したりしています。
このようなことが何回か繰り返された後に,朝会がはじまります。
その後,朝会が終了するまでにも,台に上がる教師が「気を付け」や「前へ習い」を何度も発します。
見慣れた光景ですが,おかしいと思いませんか。
朝会は儀式的行事の一つです。
一週間の始まりとしての気持ちの切替えや節目を意識したり,あるいは全校が一堂に会して所属感や一体感などを実感したりする活動です。
そのことは子どもたちに認識させているはずです。
子どもたちは,その意識で朝会に出席するために,校庭や体育館に集まってくるのです。
並ぶ位置も決まっているのです。
中には,その切替えの出来ない子どもも確かにいます。
しかし,多くの子どもはできています。
全体が集まったら,ほんの少しの間,じっと待てばよいのです。
間もなくざわつきは消え,静寂の空間が訪れます。
担任は,この間,学級の列の前によい姿勢で立って子どもたちを見守ります。
誰がすぐに集中できるのか,いつまでも切替えができないのは誰かなどを評価します。
その指導は,教室に帰ってから行います。
さて,静かになったら,司会者は
「これから朝会を始めます」
と声をかけ,速やかに進行します。
このように朝会を進める学校では,「気を付け」や「前へ習え」は聞こえてきません。
指示や命令が無くても,自発的に気持ちを切替え,列を整えようとすることができるのです。
学期の初めに事前指導を行い,その約束をつくり確認すればよいのです。
先生は,列に入って指導しているつもりですが,実は逆で,子どもの自主性を育てる本当の指導をしていないのです。
子どもにとっても,きちんとやっている子どもが,そうでない子どものために何度もやり直しさせられるのは理不尽なことです。
小さな事ですが,学校の中の指導一つひとつをあらためて見直してみると,改善しなくてはならないことが結構あるようです。(C・T)