教育研究所
No.228「若い新任教師の死」の記事から思うこと(2007年11月14日)
「夢かない2ヶ月/教師は命を絶った」との見出しで,平成19年10月9日の朝日新聞朝刊は,昨年6月に自ら命を絶った新任教師のことを報じました。
記事は,
「両親や学校関係者に取材すると,同教師に対する校内での支援が十分といえない中で,仕事に追われ保護者からの苦情に悩んでいた姿が見えてくる」
とあり,両親の
「若い先生方への心身へのサポート体制を作っていただきたい。
そして,若い先生方にいつまでも夢を追い続けていただきたいとの一念です。」
という言葉で締めくくられていました。
教師を目指す学生を育てる立場にある私は,この記事を断腸の思いで熟読しました。こ
の教師のご両親の強い思いのように,私たちは,若い教師へのサポート体制を確立していかなければなりません。
幸い,当該教育委員会はすぐに対応策を打ち出したとあり,
「学校へのスクールカウンセラーの派遣」
「指導主事や校長経験者らの新採用教師への巡回指導」
「管理職が保護者対応を支援する」
「全学年が1学級の学校に新採用教諭が配置された場合の加配を東京都に要請」
などが内容です。
この対応策は,全国の市町村教育委員会の対応の参考となり,効果が期待できます。
1.それでは,各学校ではどのように対応すると効果が上がるのでしょうか
新任の教師に近いところから考えて見るならば,指導教師が最も近くにいて,次は学年主任,そして教務主任・生活(徒)指導主任になり,副校長及び校長となります。
この組織がばらばらに対応していたのでは,効果が期待できません。
校長が委員長となり組織的に対応することで強力なサポート体制ができます。
新任教師の授業などを毎日見守る役目は指導教師です。
1週間に数回程度見守るのは,学年主任や主幹・副校長・校長が,定期的(または適宜)に会合を開き連絡を密にします。
内容は,保護者からの苦情,指導が困難な児童のこと,学級経営や授業研究など,新任教師の悩み事を中心に,指導や助け舟を出すことです。
場合により,保護者からの苦情など困難な件については,校長や副校長が引き取り解決することも大切です。
要は,新任教師が困難を乗り越えて,やがて1人前になるようなサポート体制がある学校でありたいと願うものです。
2.新任教師はどのような努力をするとよいでしょうか
新任教師の心構えとして,いきなり周囲のベテラン教師と同等な仕事をしようと思わないことです。
ベテラン教師には長年の苦労や経験,勉強の積み重ねがあり,その知恵と技術を駆使して仕事をしています。
新任教師は,今持っている若さを生かし情熱を傾けて仕事をしましょう。
全力で子どもたちを愛し,その上で指導技術を磨き,保護者にも細かい配慮で対応するように心がけましょう。
第2の心構えとして,学級づくりや授業づくりなどで手に余るようなことは,決して1人で悩まず,遠慮せず同僚や上司と相談することです。
上司はあなたの成長を心から願い応援や指導をしてくれるはずです。
また,親しい仲間づくりをすることも大切なことです。
学校に若い仲間がいるならばそれでよいのですが,市内等での同期の教師たちとの関係でもよいのです。
この仲間と研修をしたり食事や談笑で,悩みや苦労を交流して指導法の工夫や改善について交換することが大切です。
ここでほとんどの悩みは解消され,新しい情報や工夫が手に入ると思います。
新聞では,他県でも同様なことが起きていると報道されていますが,前途洋々たる若い教師が,上記心構えを大切にして,悩みながらも教職生活を,自己の生業としてまっとうすることを心から願うものです。(Y・H)