教育研究所
No.222学習指導要領(2007年08月09日)
「学習指導要領を知っていますか」
と聞かれたら何と答えるでしょうか。
「何をばかなことを」
と言われそうですね。
知らない先生はいないでしょう。
では,
「学習指導要領を読んだことがありますか」
と聞かれるとどうでしょうか。
「昔,読んだことがある」
「改訂されたときに読んだ」
という答えが多いのではないでしょうか。
さらには
「学習指導要領を読みこなしていますか」
と問われたらどうでしょう。
「はい」という答えがどのくらい返ってくるでしょうか。
去る日・さる大会で,ある大学教授が壇上で叫びました。
「現場の先生は学習指導要領を読んでないんですね。
私は,学習指導要領一日一読運動を提唱したい」
と。
見ていればまだいい方で読んでないのが実態なのではないでしょうか。
では,なぜ,読みこなさなくてはならないのでしょうか。
学習指導要領は,学校が編成する教育課程の基準です。
学校が教育課程を編成する際は,学習指導要領の目標や内容に基づいて編成します。
学校の教育課程は「学校教育の目的や目標を達成するために,教育の内容を児童の心身の発達に応じ,授業時数との関連において総合的に組織した学校の教育計画」(「小学校学習指導要領解説総則編」)とされています。
これをさらに具体化し,学年ごとや教科ごと等に,教材や学習活動,指導過程,評価などについて示したものが指導計画です。
教育課程という全体計画のもとに具体的な指導計画が立てられ,学校の教育活動は意図的,計画的,組織的,継続的,発展的に行われ,子どもたちを目標にむけてはぐくみます。
学習指導要領はこれら教育の一定の水準を確保し,国民に義務教育の質を保障する基準なのです。
よく,国が細かいところまで規定するという声を聞きますが,過去の言説に惑わされてはなりません。
現在の学習指導要領は「大綱化・弾力化」を標榜し,教育課程の編成に当たって学校の裁量に委ねている部分が多くあります。
例えば,「2学年まとめた目標や内容」
「内容や課題の選択」
「授業の1単位時間の弾力化」
「時間割編成の弾力化」
「総合的な学習の時間の目標の設定や内容の選択」
等々です。
むしろ一方では,「そんなに大綱化・弾力化して学校は自分の力で教育課程を編成できるのか」と問われる程でもあります。
また,主たる教材である教科書も学習指導要領に基づいて編集されています。
ですから,学習指導要領の改訂ごとに教科書も全面改訂となります。
教科書を趣旨にそって活用するためには,学習指導要領をしっかり読みこなすことが必要です。
ところで,学習指導要領は,これまでにほぼ10年ごとに改訂されてきました。
しかし,学校はちっとも変わらないとも言われます。
なぜでしょう。
学校が編成する(国や教育委員会ではありません)教育課程の基準である学習指導要領を全ての先生がしっかりと読みこなし,教育・指導の実際である授業を変えていないからではないでしょうか。
もちろん,先端に立って変えていく,改善していく先生もいます。
しかし,多くの先生はどうもそうではないという気がしています。
先生ですから皆さん一生懸命やっています。
でも,それは変化を意識していないのではないでしょうか。
例えば,評価一つをとっても,学習指導要領の改訂ごとに変わっています。
昭和52年:指導の成果を絶えず評価し,指導の改善に努めること。
平成元年:指導の過程や成果を評価し,指導の改善を行なうとともに,学習意欲の向上に生かすよう努めること。
平成10年:児童のよい点や進歩の状況を積極的に評価するとともに,指導の過程や成果を評価し,指導の改善を行い学習意欲の向上に生かすようにすること。
これは重要なことです。
評価で示しましたが,実は教育・指導の目標も変わってきているということです。
間もなく学習指導要領は改訂され,今後10年ほどの我が国の教育の具体的な方向づけが示されます。
それがどう変わるのかを理解するためにも現行の学習指導要領をしっかり読み返し,それに基づく自校の教育課程がどのようなものか,教育課程に基づく指導計画にそって行われている教育が,子どもたちを真にはぐくんでいるか,検証しましょう。
学校の外部の人たちが学習指導要領をよく読み,学校を見つめている今日,肝心の先生が学習指導要領を読みこなしていないのでは,プロとは言えないでしょう。(C.T)