教育研究所
No.220改めて「板書」について(2007年07月12日)
各地の小・中学校で授業を拝見させていただくことがよくあります。
最近は,テレビやコンピュ-タによる大画面の活用や大きな模造紙に印刷した資料など,多様な資料を活用した授業が工夫され感心することがあります。
一方では,伝統的な板書の内容が疎かになっていることが多く,本時の課題や進行している授業の様子がほとんど不明という板書に出会います。
毎日,毎時間行う授業を一定のレベル以上に保つためには,やはり板書の基本を忘れず授業作りを進めてはいかがでしょうか。
1)「板書」は授業の流れに沿う
本時の終わりに完成した板書を見ると,授業がどのように進行したがよく分かります。
板書の基本は,授業の流れに沿って子どもと共に作って行くことにあります。
授業の流れは多様ですが,社会科や算数,理科等の授業の流れは大まかに見ると,初めに問題があって,次に解決するための方法や予想があります。
解決の見通しがついたところで,解決活動に移ります。
社会科ですと教科書や資料,コンピュ-タを使って調べる学習になりますし,算数ですと式を考え計算することになります。
理科では実験,観察によって自然の規則性を調べます。
次に,調べた結果を黒板に出し合い,話し合いの中で吟味し検討します。
話し合いの結果,誰もが認める共通の知識にまとめていきます。
以上の流れを黒板の上に位置付けてみると,左上に問題が表示され,その下に解決の方法や予想が書かれます。
中央上には調べた結果や実験・観察のデ-タが表示されます。
右上には結果について吟味・検討したことを表示し,その下には今日分かった共通の知識を表示して完成です。
算数の場合は,1時間に数問学習しますので,上の繰り返しの形になります。
「板書」は授業の流れに沿い,上のように表示することが基本ですが,様々なバリエ-ションや発展的な形があると思います。
2)「板書」は子どもと共に作る
「板書」は,教師が一方的に表示するのではなく,教師と子どもが協力して作りあげます。
なぜなら,子どもが資質・能力を高めしっかりした知識を獲得する授業は,できるだけ子どもが力を発揮して自分で問題を解決する授業が効果的だからです。
問題を解決する手だてを考えたり予想したりする場面,解決するための学習,結果を考察する場面など全て子どもの活動,発言,記録,表現が中心になる場面であり,それが板書を形作っていきます。
もちろん,そこに教師の周到な配慮や指導が加えられ,学習の目的が達成できるようにする必要がありますが,子どもたちと共に作る授業であり板書でありたいものです。
例えば,6年理科の「人体の働き」では,人は生命を持続させるために酸素を取り入れ,二酸化炭素を出しているが,予想の段階では多くの子どもたちは,空気中の酸素(約21%)は1回の呼吸で全て体内に取り入れられると言います。
先ず,この考え方をしっかり黒板に記録しておきます。
気体検知管による実験の結果吸収された酸素は数%に過ぎないことが分かります。
この結果も板書し,予想と結果の違いについて議論しその内容も板書します。
皆で議論をまとめる形で結論を考えます。
板書が子どもたちの学習の方向を示し,子どもたちの考えを記録し整理し,議論の材料を提供し,議論を深めて結論に達する場になるとよいですね。(Y・H)