教育研究所
No.218考えさせながら教える授業(2007年06月14日)
新しい学習指導要領がそう遠くないうちに告示されるようである。
中央教育審議会答申や教育課程部会のまとめ等の中で,提言されたこともあり,次のことが教育界とりわけ小学校の授業のあり方として話題になることが多い。
小学校の授業,特に算数科では,教えていないことを問題解決学習と称して考えさせ,子どもを苦しめ,1時間を無駄にしている。
「教えないで考えさせる授業」だと一部の人から批判されている。
この改善策として,答申では「教えて考えさせる授業」を提言している。
教えてもいないことを「考えろ」と子どもに無理強いしてはならないというのである。
そこで,次のような授業の進め方が提唱されることになる。
1.前もって,教科書を読ませて予習させる。
2.授業で教師は,教科書の内容,問題の解き方を丁寧に説明し教える。
3.似た問題をさせて,理解できたか確かめ,不十分なら補説する。
4.次に,教えたことを使って応用的な問題を考えさせる。
また,1であらかじめ考え方を教え,2でその考え方をなぞって問題を解かせ,3,4とつなげていく授業も提唱されている。
「教えないで考えさせる授業」から,「教えて考えさせる授業」への転換が推奨されているのである。
本当にそうなのでしょうか?
私は,「考えさせながら教える授業」を進めてきたので,上記の二つの考え方に違和感を覚える。
私が考えている「考えさせながら教える(問題解決学習)」は,次のようなものである。
1)既習学習や既有体験を使って解決できそうな,しかも新しいことを学習できる問題を提示する。
2)既習事項や既有体験を活用させて問題の解決の仕方を考えさせる。
見通しを持ち,筋道を立てて考えさせる。
素朴な方法,途中まででもいいのである。
この段階を「自力解決」と称しているが,決して理想的な解決方法や答えを要求しているのではないのである。
3)次に,「自力解決」の結果を発表し合い,話し合い,検討し合うことになる。
もちろん,既習事項や既有経験をもとにした子どもの発想には限界があるので,教師が交通整理をしたり,新しいことを分かりやすく説明したりして補うことになる。
4)そして,新しく分かったことは知識として,仕方や形式は技能として,工夫したことや発想は考え方として「学習のまとめ」をして,定着しやすくする。
5)「学習のまとめ」は,練習したり,適用問題の解決に活用したりして,基礎的・基本的な事柄として定着していく。
6)さらに,この学習で身につけた事柄が既習事項(知識・技能・考え方)として,新しい学習内容を含んだ次の問題を「考えながら学習する」ことにつなげていくのである。
このように考えていくと,深く根づいている小学校における「問題解決学習」は習得型,探求型,活用型を統合して既習の知識・技能・考え方を活用する学習であり,「考えさせながら教える授業」であり,そのよさがご理解いただけるものと思うのである。