教育研究所
No.215-校名,校章,校歌-(2007年05月10日)
皆さんは,ご自分が卒業した小学校の校歌を今も歌えるでしょうか。校名や校章の由来を説明できるでしょうか。
校名の由来は様々です。地名からとったもの,教育方針や校訓を示すもの,設置・開校の順にナンバースクールとなっているもの,時代の要請や未来に向けた夢や希望を象徴するものなど多彩です。
校章は,校名やその一部を表象したり,学校に由来の深い自然を表し,「桜花の如く花開く」や「野ばらのごとく根強くたくましく」などといったことを象徴しデザイン化したりしています。
校歌は,その歌詞から,学校の教育方針,子どもの未来にかける人々の思いや願い,地域の豊かな自然や環境にはぐくまれることへの期待などが読み取れます。
曲想からは,元気で明るいもの,行進曲的なもの,力強さやたくましさを感じさせるもの,やさしい心を彷彿とさせるものなど,学校が理想とし目標とする子どもの姿や学校の姿を感じとることができます。
このように校名,校章,校歌には,学校がどのような学校であってほしいか,どのような子どもを育てるのか,どのような教育を重視するのかなどという,学校の原点が凝縮され象徴されています。
学校は,地域の人々の願いや期待を受けて創立・開校され,社会の変化の中で幾多の困難を乗り越えて発展してきました。
その基盤の上で,教職員,保護者,地域の人々が一体となって多くの子どもたちをはぐくんできました。
校名,校章,校歌はそうした教育の原点であるとともに,それを受け継ぎはぐくむ学校の伝統と学校の教育文化の象徴でもあるというわけです。
ところで,改正された教育基本法では,第二条「教育の目標」第5項において,「伝統と文化の尊重」を掲げています。
それを受けて改正される「学校教育法」でも,第二十一条の「義務教育の目標」の中でこのことを掲げています。
今後,学習指導要領の改訂にともない,「伝統と文化の尊重」は各教科等の教育課程に位置づけられ重視されていくことでしょう。
この伝統と文化を考えるとき,肝心の足元の学校の伝統と文化は守られ継承されているでしょうか。
学校の伝統と文化の原点とも言える校名,校章,校歌について,子どもたちは認識しているでしょうか。
学校の名前の由来,校章,校歌の歌詞や曲想が表す意味,それらに込められた地域の人々の願いや期待を自覚しているでしょうか。
それらにまったく無頓着で入学し卒業しているなどということはないでしょうか。
ある学校では,毎日,登校時と下校時に校歌を流しています。
朝は明るく軽やかな曲想に子どもたちの元気な歌声を入れて。
下校時は,静かで厳かな感じのオーケストラの演奏で。
また,正門を入ると校名と校章,その由来を刻んだ石碑と校歌の歌詞を刻んだ石碑が並べて建てられています。
子どもたちは毎日,それらに迎えられ,送られて登下校します。
校長や教職員は開校記念日に限らず,折りに触れて校名,校章,校歌に関わる話をして,それらの意味や意義と日頃の学校生活とを関連づけています。
校名,校章,校歌は学校の伝統文化の原点でると同時に,学校や地域にかかわる教育活動や楽しい学校づくりの原点でもあると言えるでしょう。
伝統や文化の尊重は,このように足元から一つずつはぐくんでいくことを大切にしたいものです。
その核となるのが校名,校章,校歌でしょう。