教育研究所
No.208 子どもたちをめぐる問題行動を考える(2007年01月24日)
平成18年は,子どもたちをめぐる問題行動が社会問題化し,マスコミに大きく取り上げられることの多い1年であった。
1月には岩手県で,高校1年生(16歳)が実母を殴打し殺害するという事件が起こった。
2月には茨城県,4月には北海道で同様な事件が起こり,6月に奈良県で起こった,高校1年生による,自宅に放火し一家3人を殺害した事件は,国民に大きな衝撃を与えた。
8月には,夏休み中の北海道で,高校1年生が友人に依頼し自分の実母を殺害するという事件が起こり,学校関係者はもとより国民に与えたショックは大きかった。
10,11月にかけては,小・中・高校生のいじめを苦にしての自殺者が続発し,教師がいじめに加担していたことが報じられ,改めて教師や学校のあり方が議論されるようになった。
こうした小・中・高校生をめぐる問題行動が起こる背景には,複雑な要因が隠されているところではあるが,今こそ,“なぜ,こうした問題が起こるのか”“どうしたらこうした問題をなくすことができるのか”,その要因を明らかにし,対策を講じなければならないときである。
このうち,ここでは,いじめ問題を考えてみよう。
確かに,いじめは学校だけで起こる問題ではない。
人間が集団で生活する場では,どこにおいても起こり得る問題である。
しかし,学校教育においては,いじめを放置しておくことはできない。
それは,学校が家庭や地域と連携し,子どもの人間形成の基礎を培い,子どもたちに生き方の基本を学ばせる場であるからである。
それは,また,学校教育で身に付けた資質・能力が大人になっても大きく影響するからである。
言うまでもなく,いじめは加害者と被害者との関係で成り立つものであり,決して加害者の行為は許されるものではない。
こうしたいじめを起こすその責任の大半は,一体誰にあるのだろうか。
それは,子どもたちの声に耳を傾けず,基本的な子育ての役割を果たしてこなかった大人たちにあると言ったら言いすぎだろうか。
今,大人たちが為すべきことは,子どもたちとのかかわりを緊密にしながら適切な応答を繰り返すことであり,他者の痛みを知り,他者と共に生きる「行き方のモデル」を子どもたちに示すことである。
大人たちの努力によって,必ずいじめ問題を解消する手がかりはつかめるはずである。