教育研究所
No.207 世相を表す漢字「命」(2007年01月11日)
平成18年の世相を表す漢字一字は「命」であった。
平成18年12月12日,日本漢字能力検定協会が全国公募した「今年の漢字」が発表され,トップが「命」,2位が「悠」,3位が「生」だった。
「命」とは「人間や動物などが生きて活動する,支えとなるかけがえのない力」を表している。
「悠」とは,「どこまでも長々と続くさま,長くゆるやかに伸びるさま」。
「生」とは,「生き生きとして新しいさま」を表す。
「命」は篆書によると,「かさ(ひとやね)の中に一」(集めるしるし),「口」(言う)「卩」(ひざまづく人)で,人を集め神や目上の人が命令することを意味している。
昔の人は,神のいいつけによって「命」が決まると考えたので〈いのち〉の意味にしたのであろう。
天から授かった「生きる定め」なのである。
相次いだ幼児・児童への虐待,深刻ないじめ問題,連鎖反応的に増え続けたいじめを苦にした児童・生徒の自殺,それに大人の自殺者の急増,飲酒運転による悲しい事件等が起きた。
一方,秋篠宮家の長男「悠仁さま」の誕生,美しい日本の国づくりを目指す新しい政権の誕生等,明暗諸々の理由が挙げられる。
「命」にしても「悠」「生」にしても,生き生きとどこまでも続く,かけがえのない力を秘めているもので,真に「言い得て,妙」なる言葉であると思う。
国連の「ユニセフ親善大使」をつとめている黒柳徹子氏の話が印象的であった。
中近東,アフリカ等で,内戦の続く国の子どもたち。
大人の勝手で戦争が続いているが,そのしわよせは子どもたちに及んでいるという。
食料不足,医薬品不足,医療施設の欠如という劣悪な環境の中で,泥水をすすり,草の根をかじりながら,なんとしてでも生きのびようとしているが,残念ながら栄養失調などで多くの子どもたちが死んでいく現実。
しかし,その国には,授かった「命」を自ら絶とうとする子どもは決していないという。
世界の実態を踏まえて,恵まれた環境の中で育つ子どもたちの「命」に対する考え方を,今こそ見直し,授かった「命」を大切にしてほしいと訴えていた。
「命の限り」「命綱」「命拾い」「命冥加」「命を懸ける」「命をつなぐ」「命あっての物種」等々。
さて,平成19年は「猪年」。どんな世相になるのだろうか。