教育研究所
No.195変わりつつある学校-その5-(2006年06月28日)
各学校に多くの変化が見られるようになった。
その一つに,経営的発想の浸透があげられるであろう。
学校も組織体としてリーダーである校長を中心に,目標の達成を目指し,P・D・C・Aのマネジメントサイクルに沿って効率的に職務を遂行すること,成果と課題を公表すること,課題解決のための具体的方策を実行することなどが重視されるようになってきた。
こうした変化は,開かれた学校,説明責任,結果責任への要請と軌を一にするものであり,学校も社会の一つの機関として存在することからすれば当然のものであるといえる。
「学校の様子が見えるようになった」
「学校が何のために,何をしようとしているのかがわかるようになった」
という保護者や地域住民の受け止め方は,学校の変化に一定の評価を下しているものと解することができる。
一方,このことによって学校はどう変化しているだろうか。
経営的発想に基づく営みにおいては,校長の権限とリーダーシップの発揮,副校長(教頭)の職責,主幹や主任,各教職員の職務遂行が強調され,組織における校長―副校長(教頭) ―主幹(主任) ―各教職員という縦の関係が強化されていく。
現在,各学校に浸透しつつある経営的発想が,組織における縦の関係を強める方向に機能しているように思われてならない。
このような学校の変化が今後さらに進行した場合,教職員の職務への意欲,自主性,自律性などとの関係はどうだろうかと懸念する。
今,各学校にとって必要なものは縦の関係の強化とともに,いやそれよりも重視されなければならないのは,横の関係の見直しと充実であろう。
つまり,組織としての総合的力量をいかにして構築していくかである。
学習指導や生活指導における教師間,教科間の連携,学校運営における学校と保護者・地域との連携協力などは,組織の学習力を高め,組織として対応することがなければその実現は困難であろう。
学校において経営的発想が必要であることは否定しないが,学校が組織の縦の関係の強化に走り過ぎてはいないか。杞憂であればと願っている。