教育研究所
No.382 「凡事徹底」(2014年09月01日)
今年の全国高校野球大会も甲子園の大歓声の中,好プレーの連続のうちに幕を閉じました。
高校野球ファンの私は,あの猛暑の中でひたむきに一生懸命プレーする彼らの姿勢に感動し胸を熱くしながらテレビ中継を気にする毎日でした。
しかし一方,プレーする選手たちのひたむきな純粋さや無念の涙を想い出す度に私の胸中に去来するものが多くあります。
今,ニューヨークヤンキースで活躍し注目を集めているマー君の母校駒大付属苫小牧高校の2003年第85回大会の初戦でのことです。8対0と優位に立ちながら4回裏降雨ノーゲームとなり,翌日の再試合で倉敷工業高に2対5で敗れてしまったということがありました。
勝敗だけで論ずれば生徒たちの心中は察するに余りがありました。しかしその無念を乗り越え,翌年以降,夏の甲子園2連覇を果たしたことは,私たちの記憶に深く印象付けられています。
そのときの,監督が香田誉士史先生でした。その香田先生が繰り返し生徒たちに語った言葉が「凡事徹底」だったといいます。
当たり前のことを当たり前にやるのではなく,当たり前のことを人には真似ができないほど一生懸命やるということで,とにかく練習させたそうです。
苫小牧市は北海道では暖かい地域ですが,香田先生は生徒たちに,真冬でも紅白戦を公式戦のつもりでプレーするよう伝え手抜きプレーは許しませんでした。当時北海道の冬の練習のセオリーからいえばかなり非常識的なことだったといいます。また,室内練習所を備えていたとはいえ,例えば,シートノックを30本50セット真冬の北海道で生徒たちに課したのです。
これらの練習を生徒たちは,納得して参加したといいます。
香田先生との深い絆があったのだと思いますが,この信頼関係のみならず目的意識や成就感を共有できていたからだともいえるのでしょう。
このような価値観を互いに認め合いながら当然のこととして,他人が真似できないような練習を行ったということです。
田中将大投手のアメリカでの会見でのコメントを見聞きするたびに,彼の成長ぶりに感心しますが,人間としての成長の原点や印象的な人柄の醸成はこのころに培われたものと思わざるを得ません。
今年の全国の地方予選大会でも,ひたむきなプレーを通して感動と涙のニュースが伝えられました。石川県の小松大谷高校の選手の皆さん来年の活躍を私たちは心から応援しています。山梨県と福島県で惜敗した選手の皆さん,今年の口惜しさをバネに次回に備えてください。努力は実ることを信じて。(H・H)
(2014年9月01日)