教育研究所
No.388 「落葉と常緑,紅葉と黄葉」(2014年10月24日)
北海道からは早くも紅葉が最盛期を過ぎたという便りが届きましたが,紅葉前線は徐々に本州を南下し,やがて12月ごろには四国や九州に達することでしょう。紅葉した葉はやがて落葉して冬を迎えます。
一方,校庭の木々や近郊の山々を見ていると,いつまでも緑色の葉をつけたまま冬を迎える木々もあります。これらの木々は常緑樹と言われますが,2種類あって温暖な地方の葉の広い常緑樹(カシ類やシイ類等)と,寒冷な地方の葉が針か釘のような常緑樹(エゾマツ,トドマツ等)があります。
なぜ落葉する木々と常緑のままの木々が,あるのでしょうか。植物は数億年の間に進化する過程で,冬の間は葉を無くしたほうがエネルギー(養分)を節約できるとした木々は,落葉するほうを選んだようです。葉を落とすと光合成による養分は作ることができませんが,葉が作る養分より消費する養分が多いので落葉するほうを選んだのでしょう。
一方,常緑樹のほうは進化の過程で冬の間も葉を落とさず,光合成により養分を生産するほうが消費量を上まわり得策だとして,葉を残すことにしたようです。ただし,常緑の葉も1~3年の間に落葉して新葉と交代しています。
さて,紅葉と黄葉の話ですが,普段は葉緑体の緑色(クロロフィル)が勝っていて,普段から葉に存在する赤色(アントシアニン)や黄色(カロテノイド)は隠れていて見えませんが,紅葉のこの時期に姿を現し増殖します。そのきっかけは,秋になり気温が低くなると葉緑体の働き(光合成)が低下することです。働きが低下すると養分ができなくなり葉は老化します。老化すると葉の柄の部分に,葉を切り離すための離層という細胞の層を作り,水や養分を遮断します。葉の柄が遮断されると葉には糖分がたまり,アントシアニンが増えて赤色を発し紅葉します。アントシアニンが多く増殖し紅葉する木々は,カエデ類,ウルシ類などです。
一方,カロテノイドが増殖し黄葉する木々は,イチョウやポブラ,カツラなどですが,これらの木々では,遺伝子の関係で赤色を発するアントシアニンは合成されないようです。紅葉には紫色のような中間色の葉もありますが,紫色は葉緑体の緑色が残っているうちにアントシアニン(赤色)が合成され,色が混合したものと思われます。ガマズミやノウゼンカズラ,シソなどが紫色を呈します。
この落葉と常緑,紅葉と黄葉の内容は,4学年の「季節と生き物」,5学年「植物の発芽と成長」,6学年「植物の養分と水の通り道」,中学第2分野「植物の生活と種類」の発展学習の参考になりそうです。
各学校の後半の学習が,充実した学習になりますよう願っています。(Y・H)(2014年10月24日)