教育研究所
No.390 「『先生がみんなの生命を守るから!』」(2014年11月7日)
東日本大震災から2年半が過ぎましたが,過日,放映されたNHKテレビ『あの日わたしは~証言記録東日本大震災~』の中で,「教育と子どもの生命を守ること」という,学校教育で最も大切なことを改めて考えさせられた番組でした。
大地震発生時,職員室にいた藤坂雄一先生(元宮城県石巻市立雄勝小学校)は,ただ事でない地震の大きさに取る物も取り敢えず教室に戻った時,子どもたちは,頭を抱えて机の下に。
大きな声で,
「先生がみんなの生命を守るから!」
と呼びかけると,
机の下にうずくまっていた子どもたちから,
「はーい!」
という返事が返ってきました。
その後すぐさま,全校一丸となった避難が開始されました。
先生たちは,子どもたちを誘導して,海抜5メートルの学校の指定避難所である神社へ向かいましたが,「津波が堤防を越えた!」という声がどこからか聞こえてきました。
避難誘導,最後尾にいた校長先生が振り返ると,学校の体育館が,押し寄せる津波に呑み込まれて壊れていくのが見えました。あっという間のことだったようです。
先生たちは,押しせまる津波を子どもたちの目に触れないように,「前を向きしっかり歩き続けなさい」と激励しながら,声掛けしながら,厳しい山道を駆け上らせ,雄勝クリーンセンター(清掃工場)に避難させました。
水や食料もなく,翌日,先生方は,救助の要請に,歩くことも困難な冠水した山道,道路を何時間もかけて市役所に向かったのでした。市役所から戻ってみると,既に,水や食料,毛布や燃料が,届いていて,子どもたちの元気な姿を見た時に,はじめてホッとしたとのことでした。
学校を挙げ地区を挙げての日頃からの避難訓練が功を奏したのだと思いますが,私には,藤坂先生が話された「先生がみんなの生命を守るから」という言葉がとても印象深く,心を揺さぶられました。先生と子どもたちの強い信頼,絆を感じるとともに,子どもたちはどんなに心強く感じたことでしょう。
誰にも予想もできないような緊急事態にあって,誰がどんな判断・どんな適切で冷静な指示ができるか,そしてどんな言葉で対応することができるか。私には,あらためて大切な課題を与えられたように思えてなりません。(H・H) (2014年11月7日)