教育研究所
No.413 「学力と心の教育」(2015年3月18日)
現在,学力が高いのに,なぜか授業妨害,教師ボイコット,内気な子や自分をうまく表現できない子や動作のゆったりした子をいじめる,みんなのものを壊すなどが頻発する学校・学級が少なくない。何人かは,学校に登校しなくなるという例もある。当該の担任は途方に暮れ,協力する教師も,指導する校長・教頭も,みんな疲れ切っている。でも,一番困っているのは,一部の子どもに振り回され,安心・安全を脅かされている子どもたちである。そして,加害者である子どもも,本人は意識していないかもしれないが,心の奥底で助けを求める小さな声を発しているかもしれない。子どもたちと,保護者と,胸襟を開いてとことん話し合い,何とか道を開いてもらいたいと思う。
ところが,全く反対の状況の学校に訪問したことがある。古い友人から声がかかり,先生方の日ごろの悩みについて懇談する会であった。
様々な資料を用意して行ったが,「いじめ」「暴力」「授業崩壊」「学習ルール」「生活規律」「子どもの同士のトラブル」「親切,思いやり,協力」などは,全く使う場がなかった。
なぜなら,管理職,教職員全てが口をそろえて,「本校の子どもたちは,思いやりがある。親切で,協力でき,仲良しである。きまりを守り,約束を守り,素直である」と言うのである。そして,教室の子どもたち,廊下ですれ違う子どもたち,掃除をしている子どもたち,みんな先生方の言う通りであった。
ただし,「学力が思うように向上しない。」「既習事項を生活や学習に活用させたいが,そのおおもとになる基礎的・基本的な知識・技能が身に付いていかない」ということが心配だというのである。理解があり協力的な保護者がただ一つ言ってくることが「校長先生,もっと子どもたちに学力をつけてください」ということだそうである。
「すばらしい教育が行われている証拠ですよ」「学力を上げるために,即効薬や万能薬はないけれど,先生方が,授業の進め方を工夫し,子どもの学習状況や反応に応じてきめ細かい支援をしていけば可能性はあります」「具体的にどうするか,授業を通して研究し,身に付けていきましょう」と,次回から「子どもが考え,分かり,表現し,学び合い,学習したことが使えるようになる」地味な校内研究を進めることを約束した。(H・K)
(2015年3月18日)