教育研究所
No.414 「教育界の大きなうねり」(2015年3月24日)
皆さんは,次の三題噺のような最近の文部科学省の動きをどのように考えられますか。
(1)文部科学大臣の次の学習指導要領の中教審への諮問(平成26,11,20)
(2)小中一貫教育及び高等教育に関する中教審答申(平成26,12,22)
(3)新しい時代の高・大接続の実現に向けた高等学校教育,大学教育,大学入学選抜の一体的改革について(中教審答申,平成26,12,22)
もう少し詳しく三題噺のキーワードを探してみましょう。
(1)の諮問では,小・中・高・大学において課題発見と解決に向けての主体的・協働的に学ぶ学習,いわゆる「アクティブラーニング」を充実させていく必要があると言っています。
(2)の答申は,戦後70年続いた「6・3・3制の学制」を「小・中一貫教育」を突破口に変革しようとする意欲が感じられます。
(3)の答申のキーワードは,「高・大接続の改革」です。「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の実施,高校教育の質の確保(新テストの導入),大学教育の質的転換の断行等です。
この三題噺は,一見すると互いに何の関係ないように見えます。しかし,三題噺を貫く目標のヒントは国内外の資料にありますが,ここではPISAの主要能力が参考になります。(1)社会・文化的,技術的ツールを活用する力,(2)多様な社会グループの人間関係形成能力,(3)自立的に行動する能力。文部科学省の文言では,「高い志や意欲をもつ自立した人間として,他者と協働しながら価値の創造に挑み,未来を切り開いていく力」となります。どうやら,この力の育成がこの三題噺の総括的な目標のようです。
「人間関係形成能力や自立的に行動する能力」を育成し,「未来を切り開いていく力」を養うためには,我が国の明治以来の伝統的な「受け身の教育」や「テストの高得点志向の教育」では不可能であることは,すでに各方面から指摘されてきました。では,どうすると改善されるのでしょうか。小・中・高・大学までの全ての教育内容,教育方法を,児童,生徒,学生が「主体的に学ぶ」または「能動的に学習する」ように変革する必要があります。
三題噺の(3)は,大学入試を「ペーパーによる高得点志向のテスト」から,「思考力,判断力,表現力を測るテスト」に変える内容です。大学入試が「思考力,判断力,表現力を測るテスト」に変わると,高校の教育内容が「思考力,判断力,表現力重視」に変わる可能性が出てきます。そこで,中・高校生の学力を維持し向上するために「小中一貫教育」及び「高等学校基礎学力テスト」導入が行われるのではないでしょうか。さらに,小・中・高・大学までの児童,生徒,学生が「主体的に学ぶ」または「能動的に学習する」ために,三題噺の(1)の「アクティブラーニング」を導入する必要があるのではないでしょうか。一見つながりがないように見える三題噺は,実は背後で大きなうねりとして深く繋がっているのです。
来年度,小・中学校の新しい学習指導要領が公表される予定ですが,今後の教育界の動きに目を離さずに対応したいですね。(Y・H)
(2015年3月24日)