教育研究所
No.421 「長い学生生活で得たもの」(2015年4月30日)
ある女子生徒の話です。彼女は中学1年生の2学期頃から不登校となってしまいました。対人関係や様々なことでストレスが重なり,自分に自信が持てなくなってしまったのです。
いろいろ悩み苦しみましたが,家族に見守られ,県立工業高校の定時制に進学しました。そして7年目の今年3月,彼女が手に入れた「宝物」を胸に高校の卒業を迎え,無事社会に旅立つことができたのです。
手に入れた「宝物」・・・,それは「自分がとても大切な存在であると自覚できたことへの自信であり喜び」でした。
彼女は,昨年11月,東京で行われた「全国高等学校定時制・通信制生徒生活体験発表大会」で,自らの体験「長い学生生活で得たもの」を発表し,会場から大きな称賛を得ました。聴衆のひとりだった私も大きな感銘を受けました。
「高校生活7年間は,ひとよりも多くの時間を費やし,先生や友人に『多くの気遣いや労力』を厭わせ,はては家族に金銭的に多くの負担をかけさせてしまったが,それらにも自らの心を寄せられることができるようになった。また,自分のことしか考えられない身勝手な自分を恥ずかしく思うことができるようになった。」と。
そして,高校生活の卒業を前にし,失ったものより得たものの大きさと大切さに気づくことができたことが何よりも嬉しく思っているとも語っていました。
彼女が,今,最も大切にしていることは,自分の弱さに正直に向き合い,時間がかかっても自分を理解し問題に向き合う「悩む力」を「生きる力」に変えることができるようになったことだと言います。この力は,どんな難しい勉強よりも価値があると思っているのです。そして,生きることの大切さを教えてくれた定時制高校で出会えた友人や先生方のかけがえのない支えに対し,「感謝する心」を持つことができた,との言葉が印象的でした。
これからの人生は,平坦な道ばかりではないと思いますが,困難にも「正直に向き合える力を持ち,時間がかかっても立ち向かうこと」ができる彼女は,豊かな人生を切り開いていくことと,私は信じています。(Y・H)(2015年4月30日)