教育研究所
No.435 「私の愛読書『入学文集』」(2015年7月8日)
高校教師生活を終え幾ばくの年月を経た私であるが,今でも大切にして読み返す文集がある。それは学級担任としての最後の生徒たちが高校入学の心境を綴った「入学文集」である。
「入学文集」を作るきっかけは,それまで担任をしていた生徒たちが高校生活や進路のことで悩むことが多く,自分の未来に夢を膨らませて入学してきた自己を気付かせ,楽しい学校生活を送って欲しいと考えたからだった。
その「入学文集」が,いつのまにか私の愛読書になっていた。
なぜ,この「入学文集」に親しみを感じ,楽しく接することができるのか,いろいろと考えてみた。どの文も生徒たちの澄んだ心があり,自分の夢や性格,長所,短所などを正直に見つめようとしている。そして,新しい高校生活で,自分の良さを伸ばし,充実した学校生活を営むことへの純粋なひたむきさが強く感じられ,人生の夢,理想,生き方などを語る場合でも,真剣に努力しようとする姿勢が伝わってくる。
はじめての保護者を交えた三者面談のことだった。「入学文集」を見ながら生徒の高校生を送る心構えや卒業後の進路に向けての決意について話し合う中で,我が子の思いがけない成長ぶりを知った母親の感動した姿や,入学時の気持ちを振り返りながら自分の進路について真剣に考える生徒の姿が強く印象に残っている。生徒の中には,入学当初の志を貫き通して,社会福祉関係の要職に就いて活躍している者もいる。
純粋なひたむきな心を抱いて高校生活を歩みだした生徒たちの清々しい気持ちと担任として共に過ごした3年間は,まさにこの「入学文集」と共に在った。
生徒たちのひたむきな心をしっかりと胸に刻み,このような誇り得る生徒たちと出逢えたことや教職生活を全うできたことの喜びを感じているこの頃である。(H・H)(2015年7月8日)