教育研究所
No.462「電車の中の「強情な母親」」(2015年9月3日)
帰宅途中の電車の中の出来事である。A駅でほぼ満席,もちろん優先席も。
B駅で,まだ生まれてからそれほど経っていない乳児を連れた母親が乗車してきた。男子中学生が席を譲ろうとしたが,「すぐにおりますから結構です」と断っていた。中学生はばつが悪そうに座り直した。
老人のCさんが,やはり同じようにお声をかけた。それでも,「私がすぐおりますから」と断った。母親は,電車がカーブを切るたびによろよろしている。おまけに,子どものミルクなどを入れた袋と,買物らしきものを入れた大きな袋を2つも持っていて,その上,赤ちゃんを前に抱えているのだから大変そうである。Cさんは,「荷物だけでも持ってあげましょう」と再び声をかけた。それでもこの母親は「大丈夫です」と好意を強情にもつれなく断った。
母親は,「もし,電車が急ブレーキでもかけたら,すっ飛んでしまい,乳児は放り出され,大けがをするか場合によっては命の危険さえある」ということに思いが及ばないのか不思議に思える光景だった。
その母親は,乳児を抱え,大きな荷物を持って,実に,15駅先で下車していった。この母親は,困っている人に席を譲ることはしないだろうし,育てられた子どもも席を譲る温かい気持ちを持たない子になってしまうかもしれない。人間は,助けられる状況にあるときは素直に受け入れ助けてもらい,自分が助けられる場合には普通に手を差し伸べてあげるようにしたい。
こんな強情な母親のようにはならないでほしい。(H・K)(2015年9月3日)