教育研究所
No.483「生活科の体験・表現活動」(2015年12月7日)
生活科の研究会で学校を訪問しますと,「子どもたちに体験活動ばかりさせておいて,質の高い気付きはできるのでしょうか?」とか,「質の高い気付きをさせるためには書かせたり話し合いをさせたりして言語活動をさせたいのですが,1・2年生ではなかなか乗ってこないのですが?」という質問を受けます。
1,生活科の体験活動
前段の質問に対しては,「子どもたちが目標を持ち,目標を達成するためによく考え,あれこれ工夫し,人に聞いたり,作り直したりする充実した体験活動ができる学習の場を先生が準備できれば,子どもたちは自ら質の高い気付きをします。」とお答えしています。
例えば,2学年の「動くおもちゃ作り」では,作る目標を持たせるために,1つのおもちゃを指定するのではなく,先生がゴムで動くおもちゃや風で動くおもちゃ,水で動くおもちゃ等を見せて,子ども自身が本当に作りたいおもちゃを選択させます。自分で選択した子どもたちは強い願いやしっかりした目標を持ち,意欲的におもちゃを作りに取り組みます。作るおもちゃの内容は,子どもたちで作ることが可能で,動かない場合は調整したり修理したりすると動くようになる適切な難易度のあるおもちゃが適していると言えます。
上の「動くおもちゃ作り」の内,「帆で動く車」の例では,4個の車輪とひごの車軸は先生が準備し,車体と帆は子どもたちが作るように勧めます。子どもは車輪や車軸,車体などを何度も調整して何とか走るようにし,あとは帆の大きさや風を当てる角度を工夫して円滑にスビード豊かに走る車を徐々に実現していきます。よく走る車の実現は,一人ではできません。隣の友達のおもちゃを見たり教え合ったり,先生の助言や助けを得たりして実現していきます。体験活動の前後に,体験活動の質を向上する言語活動が必要です。
この体験活動の過程でこそ子どもたちは多数の質の高い気付きをし,頭脳と手足を連動させて創造する力を発揮し,友達や先生と創る楽しさやよく走った車を作った自分への満足を味わいます。子どもたちの能力と創造性と主体性,人間性が最もよく育つ場面です。質の高い体験活動ほど,質の高い気付きばかりか,もっと重要な創造力や主体性,人間性を育てることができると言えます。
低学年の児童は,「具体的な活動を通して思考する」とか「成すことによって学ぶ」と言われますが,子どもたちは体験活動の中でこそ思考し,気付き,知識を獲得し,想像力や人間性を育てるのです。ただし,この際先生が質の高い体験活動ができる授業内容を準備することが大切であると思います。
2,生活科の表現活動(言語活動)
後段の質問「質の高い気付きをさせるためには書かせたり話し合いをさせたりして言語活動をさせたいのですが,1・2年生ではなかなか乗ってこないのですが?」という質問には次のようにお答えしています。
前段で記述しましたように,生活科では主として「質の高い体験活動」によって資質や能力を育成できると考えます。それにプラスする形で,言語活動を含めた表現活動をすることにより,次の体験活動の質が向上します。同時に表現力や情報を交換する力,書く・話す力等が育成できます。具体的には簡単な話し合いや絵や言葉で書く,ペープサート,劇化などがあります。ただ,表現活動を生活科の主たる活動にすることは本末転倒になります。あくまでも,「質の高い体験活動」を実現するための表現活動という位置づけになります。また,1・2年生には難易度が高すぎる表現活動をしている場合がよく見られますので,内容の難易度を十分吟味して子どもたちでも可能な表現活動を実践されるとよいでしょう。
1・2年生が意欲を持って表現活動をするためには,1・2年生の難易度にあった興味を持つ表現活動を選ぶ必要があります。話す・聞く活動は,自然発生的な話す・聞く活動を大切にしながら,自慢話や苦労話など喜んで話す内容から始め,2年生では少しは双方向性の話ができるようにします。表現活動については,初め絵を描くことから始め,短い文章を加え,2年生では2~3行は書けるようにします。その他,ペープサート,劇化なども適宜入れて表現力を育てていくとよいでしょう。(Y・H)
(2015年12月7日)