教育研究所
No.494「未来志向の平和の願い」(2015年12月25日)
NHKの番組を見ていて感動した。見逃した人もいるかもしれないので,乏しい記憶力に基づいて再現してみよう。
広島と長崎に原子爆弾投下を命じたのはトルーマン大統領である。非人道的な原爆投下に対して,彼は,日本に戦争をやめさせる意図だった。「あれ以上戦争を継続していたら犠牲者がもっともっと増えていたであろう」と。これは,原爆投下国の見解として定着しているようだ。
時は移り,被爆して15歳で亡くなった貞子さんのお兄さんが,トルーマン大統領の孫ダニエルさんに面会を求めた。実現し,原爆投下について率直に尋ねると,「子どものころから聞いていたが,本当に,そうなのかと,疑問を持ち続けている。…」と言い,細部はわからないが,お兄さんとダニエルさんの気持ちに通じるところがあり,長崎と広島を訪れることを約束した。その折,貞子さんが病床で最後に折ったおりづるをダニエルさんにさし上げた。そのつるは,記念館に展示してあるそうだ。
その後,ダニエルさんが,広島と長崎を訪れ,原爆記念館などを参観したり,高齢となった被爆者たちと懇談したりした。
ダニエルさんは,実際に記念館の展示や被爆者の話を聞いて,原爆は悲惨であることがよく分かった。そして,「子どもや孫,ひ孫,これからの人たちにこのような目にあわせたくない。未来を戦争のない平和な世界にしたい」と静かに,しかし強く語る被爆者の声に接し,「謝罪を求めない。誰を責めるでもなく,純粋に世界の平和を願っている人たちに感激した」と,率直に感想を語っていた。この番組に登場した全ての人が知的で,理性的で,久しぶりに人間らしさを実感した。(K・H)
(2015年12月25日)
2015年の「教室の風」は,今回が最終号です。
次回は,1月中旬に配信の予定です。
読者の皆様には,よい新年をお迎えください。今後とも,よろしくご愛読のほどお願い申し上げます。