教育研究所
No.496「『定・通高校生の青春メッセージ』を聴いて」(2016年1月7日)
昨年11月,63回目を迎えた「全国高等学校定時制通信制生徒生活体験発表大会~定・通高校生の青春メッセージ~」で高校生たちの新鮮な体験発表を聴く機会を得た。全国から選ばれた57名の高校生のメッセージである。
彼ら彼女らの定時制高校や通信制高校の入学の動機は,新たな自分を発見することだったり,小学校時代からの不登校を克服することだったり,家庭の経済的事情や病気のため入院生活が長かったことなど,実に様々であった。中には高校の和太鼓クラブに入りたくてという生徒もいた。
高校生たちは,これまで過ごしてきた高校生活での体験を生き生きとしたメッセージに置き換え,会場に大きな感銘を与えた。彼らの心の在り様はみな前向きで明るく,青春の血潮がみなぎり私たち聴衆の心を揺さぶった。人生の目標や希望を体得し,これまでにない自分を発見し,自分の存在を好きになって社会へ飛び立とうとしていることだと感じた。
一人の女子高生は,夏休みに高校生ボランティアとして,「不登校中学生のキャンプ」に参加し,そのときの出来事を語った。
急な坂道のある山道のウォークラリー。寄り添っていたグループの子どもたちが,次々と「もうやめたい」,「帰りたい」と言い出した。せっかくのウォークラリーがパニック状態になりかけ,彼女の心も大きく揺れたという。しかしその時,彼女が定時制高校に入学し,中学時代までの中途半端な自分に向き合い,勉強,アルバイト,クラブ活動を積極的に行っている現在の自分を思い起こしたそうだ。子どもたちに,苦しくても,みっともなくてもいい,でも頑張ってほしいと願い,「大好きな自分を見つけるためにも,歩きつづけよう」と,大きな声で励まし続けた。それは,自分自身を奮い立たせることでもあった。すると,子どもたちは自分を取り戻して,再び元気に歩き始め,全員ゴールできたという内容だった。
この出来事は,彼女にとっても大きな体験となり自信となり,新たな自分発見となった。学校の先生からも,「『誰かのために生きること』の素晴らしさを知ってよかったね」と励まされ,一層自分への自信を深められたと,明るく語る姿がとても印象的だった。
三月に卒業するこの女子高生は,どんな社会人になるのだろうか。きっと,いろいろな困難を乗り越えて,豊かな人生を切り開いていくことだろう。私の教師魂が揺さぶられた一日となった。(H・H)
(2016年1月7日)