教育研究所
No.501「冬の植物の身近な進化」(2016年1月22日)
明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
新しい年の新学期を迎え,児童・生徒たちは元気に登校していることと思います。先生方初め学校関係者の皆様も,新鮮な気持ちで目標を新たにして,平成28年度(2016年度)をスタートされたのではないでしょうか。
新年早々隣国では核実験という世界が震撼する出来事がありましたが,シリアやイラクの中東情勢,難民問題等は,今年こそ世界が性根を据えて解決の向けて話し合わねばならないのではないでしょうか。日本も何らかの力を添えることができれば幸いです。
さて,厳しい国際情勢に比べ自然界は数百万年単位で微々たる進化を果たしながら,淡々と毎年の営みを繰り返しています。ツバキやサザンカ,ビワは,冬の初めからすでに開花していますが,暖冬の影響か1月早々にもうロウバイの花が咲き始めています。2月には伊豆河津町のカワヅザクラが,咲き始めるかもしれません。
花は,受粉をして果実を作り子孫を残すのが仕事ですから,風媒花はとにかくとして,虫媒花は虫の少ない真冬に開花するという戦略は,ひどく不利な感じがいたします。いえ,他の花が少ない冬こそ,競争が少なく有利であるとも考えられます。また,初夏に果実を得たいと考えると時間的にこの時期が開花の適時と考えているのかもしれません。さらに考えると,はるか昔,東南アジアの熱帯の四季のない地方に生育していた頃12~2月に開花していた植物が,長い年月の間に四季のある日本に住むことになったのかもしれません。それはとに角として,せっかく花の少ない時期に開花するのですから,よく見て楽しむ方が前向きかもしれません。
ロウバイですが,隣国朝鮮から17世紀初めに渡来したようです。名前は「蝋梅」の音読みを名前にしたようです(牧野図鑑)。ロウバイ科いうグループに入り,トウロウバイやクロバナロウバイ等の仲間があるようです。近所の公園のものはすでに開花しており,よい香りを振りまいています。まだ葉は付いておらず,枝に花のみが固まって付いています。色は透明な黄色とうすい茶色で品の良い花です。直径は2.0~2.5cmぐらいで,1つの花を外側から見ると,がく片と花弁の区別がなく,いきなり花弁状のものがくっついています。外側の花弁状のものは円形に近く5mmぐらいしかなく,内側のものは長さが10mmぐらいあり,楕円形で美しい透明な黄色の花弁です。全部の花弁状のものを黒い紙の上に並べてみると,全部で20数個ありましたが,形や大きさや並び方はバラバラでした。植物の花の進化の方向は,各部位の形や大きさは同一,並び方は規則的,数は減数の方向ですから,ロウバイは原始的な要素を備えた植物であると言えそうです。
よくツバキとサザンカは似ていて,見分けるのに困ると言われます。確かに5枚の赤い花弁,たくさんの雄しべ,葉は冬でも青く,開花の時期もほぼ同じでよく似ています。見分けるポイントは,花弁や雄しべの付き方と葉の縁のギザギザ(鋸歯)にあります。ツバキの花弁や雄しべは基の方が全てくっついているのに対して,サザンカの花弁や雄しべは全て離れています。その結果,花弁や雄しべが落ちる場合,ツバキはくっついてボトッと落ちますが,サザンカはバラバラに離れて落ちます。地面に落ちた花を見るとツバキとサザンカの違いは,一目瞭然というわけです。また,葉の縁のギザギザは,ツバキのそれは大きく,サザンカのそれは細かいという違いがあります。このことから,ツバキとサザンカの見分けは容易ではないかと思われます。
ロウバイの仲間とツバキの仲間を比較すると,上のロウバイに比べ,ツバキの仲間はがく片5枚,花弁5枚,雄しべ多数です。ツバキの仲間は花弁や雄しべの大きさはほぼ同一,数は5で,がくや花弁の並び方は互い違いの互生であり,大変規則的な構造の花であることが分かります。ロウバイの仲間の非規則的な構造とツバキの仲間の規則的な構造は,進化の進度の違いを表現していて興味が尽きない自然の一部であります。
4年生は,冬も動植物の観察をして,樹木が生きていることやカエルの冬眠等,自然の営みを明らかにしますが,冬でも開花しているロウバイの仲間やツバキの仲間を観察して,自然の仕組みの一端を追究して知識や能力の向上を図ってはいかがでしょうか。(Y.H)
(2016年1月22日)