教育研究所
No.514「ほめるのは,本当にダメなのか?」(2016年2月12日)
最近,「ほめると子どもはダメになる」(新潮社)を読んで色々と思った。しつけや基本的生活習慣のようなことは,「理屈抜きで幼少のころから刷り込んで徹底すべきだ」と思っているので,著者に同感する。ただし,知的活動の場合は少々異なるのではないかと思う。
実は私は,国研の永野重史先生の講演で「全体より部分(部分のきらりと光ることを評価),人より仕事(その子の下事の善悪を論じても,人格に及んではならない),完璧より発想・努力(正解よりも発想・努力の良さを認めよう)」(昔々のことでうろ覚え)を聞いて,昭和50年頃「肯定的評価」と言う発想で子どもの学習状況や反応を見取り,評価した方が,子どもは伸びるということに気付き,主張し始めたからである。
平成4年頃,理論立てて主張し,肯定的評価,加点法の評価と言うことで,仲間内ではかなり認められるようになった。つまり,学習場面においては,「自分で課題を見つけた」「自分から解決活動に取り組んだ」「自分で工夫して解決している」「それをノートに表現している」「グループで情報交換している」「みんなと学び合っている」と言うことの一部分でも見えたら,認め,褒めることが必要である。ただし,その後で「ここを…すると…」とさらに良くなるように「注文」を付けることが重要である。ほめっぱなしではなく,次に向かって,子どもに応じた「負荷」をかけることを忘れてはならない。
文部省「小学校学習指導要領総則第5の2の(10)」(平成10年12月)には,「児童の良い点や進歩の状況などを積極的に評価するとともに,指導の過程や成果を評価し,指導の改善を行い学習意欲の向上に生かすようにすること」とある。これは,文部科学省「同総則編第4の2の(11)」(平成20年3月,平成27年3月改訂)に,引き継がれている。
また,文部省「小学校学習指導要領解説算数編p172(平成11年5月)」には,「…結果だけでなく過程の良い点,工夫したこと,努力したこと,進歩の状況や可能性を受容的・肯定的に評価するなど評価の在り方に配慮する必要がある。…」とある。更に文部科学省「小学校学習指導要領解説特別の教科道徳編p105」(平成27年3月)には,「児童の成長を見守り,努力を認めたり,励ましたりすることによって,児童が自らの成長を実感し,さらに意欲的に取り組もとするきっかけになるような評価をすることが求められる。」とある。
結論,「良い所はきちんとほめる」,その後で,さらに良くなるように「注文を付ける」ようにする。「注文を付ける」ことが「注意すること」なのか,「叱ること」なのか,「強い指導をすること」なのかは,教師個々の教育観(指導観)による。(少々,虎の威を借りることになったきらいのあることに身を縮めている)。(H・K)
(2016年2月12日)