教育研究所
№590「事実は小説より普通,まして子供は」
好きな作家の名前がかんむりについたある受賞作品を読んだ。私は,教師を長くしていたし,サッカークラブの運営などにも関わり多くの子供たちと接してきた。その体験を通して,この作品の一部に,重箱の隅をつつくような次のような感想を持った。作品全体の感想ですか? まだ読み終わっていないので,選者の様なべたぼれの感想は控えます。
〇誰かが飼っていたらしい小鳥の死骸が公園に堕ちていた。主人公がそれを見つけ,焼き鳥の好きな父親のために持ち帰って食べようとし言い出し,母親がなだめる場面があった。この子の得意な反応であるかもしれない。でも,私の経験の中にはこのような子供はいない。戦後の食糧難の時代に,野鳥を捕獲して食べた経験はあるが,それと自分の飼っている小鳥とは全く別の感情を抱いていた。昭和時代の終わり頃,たくましい子供を育てようと,学級の子供を河原に連れて行って,ハトを捕獲し,料理して食べさせるという実践をした教師がいた。子供たちがそれ以来,肉(特に鶏)を食べなくなったと苦情が来て大騒ぎになったことを記憶している。
〇また,その小鳥の墓を作ることになった。周りにいた子供達が涙を出して大泣きし,野の花を摘んでお墓に供える場面がある。子どもは,自分の飼育していた生き物が死ぬと心の底から悲しみ,お墓を作って弔う一方で,公園のゆかりのない小鳥の死骸を平気で蹴飛ばすような面がある。この場面も不自然である。(K・H)
(2016年8月19日)