教育研究所
№598「不登校生への学校支援」
夏休みを終えた2学期の始めに,学校へ行けなくなってしまう中・高校生が多いと聞く。
クラスや部活動の友人や教師との人間関係,学習の遅れ等,学校生活をめぐる問題や夏期休業中におこった生活環境の変化などが複雑に絡まって不登校になり,そのことで様々な事件に巻き込まれたりすることが多いのではないかと報道されている。
先日,多くの不登校生から悩みを聞いたり,相談を受け,そのような生徒たちに自信を回復させて,卒業に繋げている,ある高校のベテランのカウンセラーから学校でどのような支援をするべきか,アドバイスを聞くことができた。
「子どもが学校に行きたくないと言っている。高校を卒業しなければいけないと分かっているはずなのに,どうして学校へ行けないのか。」という親の心配に対しては,
- この年代の中・高校生は,心身ともに大人世界に入る時期にあたり,些細なことで不安や悩みを抱え心が揺れる。自分のアイデンティティ,つまり自分が将来何を望んでいるか,どう生きたらいいか,自分は何者であるか,等について真剣に悩む時期である。
- このような心の悩みや不安を抱えた子どもに対して,教師や親は良かれと思って,ついつい先走って話してしまい,子どもはますます心を閉ざす。
- 子どもが口を開く状況を待てるかが教師や親に課せられた第一歩であり,子どもが話す糸口ができたら,その状況に寄り添い,子どもの考えや心情を理解することによって,子ども自身が本来やらなければならないことに自ら気づく。
という観点を踏まえ,親や教師の対応の仕方として大切な次の1~5を話してくれた。
- 先回りしない(子どもより先に口をきかない,質問や命令になることが多いから)
- 必要最小限の会話(事務連絡程度にする)
- 話してきたら真剣に聞く(子どもの方を向いて)
- 評価はしない(子どもの言葉に「の」をつけるだけ。ありのままをフィードバックするだけ)
- 子どもとともに揺れ動くように心がける
更に,子どもからの話は,できれば子どもから信頼されている教師・カウンセラーが同席して聞くことができれば,今後の指導につながっていくとのことであった。
子どもが,親や教師に対して望んでいるのは,「自分のために何かをして欲しい」のではなく,「自分のことを分かって欲しい」のであり,どんな行動も認めて欲しいということではない。また,間違った行動は否定しても,本人を否定しないことが重要である。
特に教師は,生徒自身の問題解決能力を信じて任されていると受け止められるような対応が大切で,生徒のためという大義名分のもとに,強引な指導を繰り返すことはあってはいけないと,強調していた。
生徒が,安心して生活できるところ,「居場所」は,家庭であり学校である。学校は,どこかで生徒の本音を受け止めて,生徒一人一人が自信を持って自立の道を歩き始めることができるような支援が大切である。
学校は,クラス担任・教科担任・部活動の顧問・カウンセラーを含めて全教職員が,全生徒の誰かと繋がっている体制作りが必要であることを改めて感じた。(H・H)
(2016年9月9日)