教育研究所
№612「先生の支えに感謝して」
全国の定時制高校と通信制高校に通う生徒が,様々な逆境を克服し自らの人生を切り拓いていこうとする体験を語る,「青春のメッセージ」は,聴く人に大きな感動を与えてくれる。昨年11月,東京・六本木のハリウッドプラザで,全国から選ばれた58名の生徒が参加する「第64回全国高等学校定時制通信制生徒生活体験発表大会」が開催された。
小・中学校で不登校になったり,高校を中退するなど,事情を抱えた若者たちから高校に行きたくても行けなかった50歳代のお母さんが,学校生活を通して学んだ体験を熱く語った大会であった。
発表に臨んだ生徒たちは,それぞれ家族や職場の人々の見守りや友人・先生方との温かい交流に支えられていた。そして,授業や生徒会・部活動に一生懸命取り組み,過去の体験を糧にして苦難を乗り越え,大切なものを発見し,自信を取り戻し,夢や目標に向かっていこうとする姿勢があった。そんな前向きな青春の姿に場内は感動の渦に包まれていた。
スーパーマーケットで働きたいと思っていたある生徒は,長い間の引きこもりで対人恐怖症になったために,いつも面接で失敗した。その事情を汲んで,先生が親身になって面接指導を行ってくれた。そして自信を持って面接に臨んだ結果,今では学校と仕事を両立させ,笑顔と温かい心でお客に接することできるようになった。
また,不登校を繰り返し,中学時代は勉強の仕方が分からず困っていたという生徒の発表も忘れられない。高校入学後,先生たちは自分の悩みに寄り添って指導してくれ,初めて勉強することの楽しさを知ったという。先生たちからは,「どんなことでもいい!分からないことがあったら聞いてほしい!」と言われていたが,生徒たちは,「分からないことは,恥ずかしこと」という思い込みから抜け切れず,とても質問どころではなかった。しかし,ある日どうしても分からなかったので,思い悩んだすえに恐る恐る聞きにいくと,「やっと来てくれたね」と言って丁寧に教えてくれた。その時初めて「分からないことが分かる喜び」を感じた。やがて「分からないこと」や「不安を感じていること」は,素直に先生に聞くように心掛けるようになり,気持ちがとても楽になった。授業も楽しくなったし自分の心も大きく開けたような気がして,充実した学校生活を過ごしているという。
中でも,卒業後の目標が大学で勉強して,教師になりたいと思って頑張っている生徒は,「今の高校で教えてもらっている"面白い先生","変わった先生"のような先生になりたい」と,ユーモアを交えて嬉しそうに語りかけている自信に満ちた笑顔が心に強く残っている。
教師が生徒たちの心,気持ちに寄り添いフォローすることによって,不安を抱えた生徒には安心感を与え,生徒の持っている力を引き出すことにつながる...。そんな青春のメッセージを聴き,私は多くの思いを新たにした。 (H・H)
(2017年1月20日)