教育研究所
№627「新採教師の4月への第一歩」
4月は新入生や新社会人にとって,希望と不安を抱きながらも新しい挑戦に胸膨らませる季節である。
新採教師にとっても,喜びと期待を胸に,「子どもたちと明るく楽しい充実した学校生活」,「責任ある仕事」をしたいと,いろいろな抱負を持つと同時に,「子どもたちとの授業や学級づくりをどのように進めたらよいだろうか」,「保護者との信頼関係をうまく築けるだろうか」,「先輩教師との交流は大丈夫だろうか」などの不安や心配も尽きない。
東京都教育委員会は,4年前から教員採用試験に合格した採用候補者を対象に「採用前実践的指導力養成講座」(12月~1月に開催)を実施している。
急激な社会の変化の中で,子どもたちを取り巻く教育課題も複雑化・多様化し,教師に求められる資質・能力も変容している。学校に着任後まもなく,悩む教師が増えている現状を考えると,採用候補者が,「教師に必要な実践的な知識・技術・情報や心構え」を身に付ける大変有効な研修の機会の一つである。
3日間実施される内容は,初日は,「教育課題,人権教育,特別支援教育」等についての講義・演習を学び,2,3日目の2日間は,10名位のグループに分かれ,小・中・高・特別支援学校から2校を訪問し,「学校の1日の活動」を体験する。受講生たちは,授業参観はじめ進路・生徒指導,部活動・給食・清掃指導等の教育活動を体験しながら,教師の実践的な指導のあり方や教師に求められる基本的な資質・能力について研修する。また,研修を振り返るために先生方との協議会の場を設定している。
講師は、受講生の授業や学級活動における一人一人の子どもに対する触れ合いや言葉かけの工夫等を観察し,講師の実体験に基づく授業づくりや学級づくりについてのアドバイスを行う。それが受講生に自信や安心感をもたらすようだ。そして,中休みや昼休み,放課後の部活動等の参観時に,子どもたちから「4月からの教員生活は頑張ってください。」「良い先生になってください。」と話しかけられ,顔を紅潮させながら笑顔で応えている受講生もいた。
協議会で受講生の一人が,自分が抱えている不安や悩みについて質問したところ,若手の先生から「着任当時は,毎日,教材準備に追われ,追い詰められていた。思い切って先輩の先生に相談したところ,丁寧に教えてくれたので,安心感とともに心にゆとりができ,次第に必要な教材を見極めながら準備ができるようになった。子どもの立場に立ち,誠意をもって,真摯に向き合っていくことが大切であることがわかってきた。」と応えてくれた。「このアドバイスに勇気づけられました。」と語っていたのが印象的だった。
協議会に同席していた校長が,今日ある自分の姿を振り返りながら,「初めからすべてできる人はいない。悩みながらも自分の良さを子どもたちにぶつけて,子どもたちから学びながら成長してきたと思う。子供たちの成長していく姿から教師という仕事の魅力とやりがいを感じている。」と話されていた。
学校体験研修を通して学んだ教師の仕事の重さとやりがいを心に秘め,誇りと自信を持って,受講生たちは4月からスムーズな教師生活のスタートを切ってほしいと願っている。(H・H)
(2017年3月13日)