教育研究所
№641「『はーとふる活動』~生徒からの相談~」
今,学校は,子供たちと触れ合う時間を十分確保するなど「いじめ防止」に向け様々な取り組みを行っているが,それでも「子供たちの声をきちんと聞けていたのか」,「子供たちのSOSを見逃してはいなかったか」などと指摘されている。なかなか無くならないのが実情である。
先日,私は都立高校の校長先生から,以前校長として着任していた都内の中学校の「はーとふる活動」についての話を聞く機会を得た。その中学校は,校訓として「思いやり」の心を掲げ,望ましい人間関係づくりを図るために,「はーとふる活動」という教育活動に取り組んでいる。
「はーとふる活動」には,
- 「はーとふるウィーク」:生徒が希望した教員と面談する週間
- 「君はどこかでヒーローヒロイン」:特別活動における学級・学年の活動,生徒会活動,学校行事等で,生徒一人一人が友達のよかった点やかっこよかったところを紙に書き,掲示板に貼りだして意見を共有して,生徒同士でよいところを認め合う活動
- 「はーとふるタイム」:昼休みに教育相談室で生徒と教員が触れ合う時間があり,お互いの人格を尊重し合い,生徒と教員,生徒同士の信頼関係を深める
など創意ある教育活動である。年度始めのガイダンスなどで十分説明を行い, 生徒や教員の意識を高めているとのことである。
「はーとふるウィーク」は,生徒と教職員と面談する機会を設けて,様々な悩み事や相談事に応じることはもちろん,生徒と教師との豊かな人間関係を築く機会としている。生徒一人一人が事前に配布された「希望票」に,生徒自身が話をしたい先生や相談したい先生の名前を記入し提出する。担当する先生方が提出されたこれらの用紙を集計して,生徒と面談する先生の日程,時間の一覧表を作成する。希望する先生の名前を書かない生徒に対しては,担任の先生やカウンセラーを含めた担当者で話し合い,その生徒のことを配慮しながらその生徒と面談する先生の組み合わせを考えているとのことである。
「はーとふるウイーク」は,全校の生徒たちが,学校生活,友人関係や家庭生活での楽しいこと,充実していること,困っていること,悩んでいること,心配なこと,卒業後の進路のことなどを,生徒自身が希望した先生方と話し合ったり,相談できる機会の一つである。
ある文学好きの生徒は,悩んでいた卒業後の進路について校長先生と直接話し合ったのがきっかけとなり,中学・高校を卒業し,現在,大学の人文学部に入学し,文筆活動を目指して頑張っているとのことである。「はーとふるウィーク」は,先生方にとっても,生徒たちと向き合う貴重な時間となっている。
「はーとふる活動」は,教職員が生徒と接し,生徒同士がお互いに理解し合う機会を多く持って,教職員と生徒との豊かな人間関係を構築し,生徒の良さや個性を伸ばすとともに,「いじめ防止」,「いじめの早期発見」につながっている素晴らしい教育活動であると確信した。(H・H)
(2017年5月12日)