教育研究所
№642「花菖蒲とショウブ」
5月の空の鯉のぼりは,爽やかな春が訪れたことの喜びを感じさせてくれます。
この節はまた私の子どもたちが小さい頃,お風呂にショウブの葉とともに入りはしゃいだことを思い出します。あのとき近所の花屋さんから買ってきたショウブは,花菖蒲だったのでしょうかショウブだったのでしょうか。
小さな兜と共に飾った花は,紫の花でしたから「花菖蒲」だったのでしょう。調べてみますと,花菖蒲はもう500年前頃から5月の節句に飾られていたそうで,中国から伝えられた「子どもたちを含めた健康祈願,無病息災,尚武」の願いのために飾られたそうです。
なぜこの花が選ばれたのか,中国でもこの花があったのか等は分かりませんが,現在飾られている花菖蒲は,野生のノハナショウブを人の手で品種改良して作り出したものです。ノハナショウブはアジア北東部に分布し,日本では北海道から九州までのやや標高の高い草原や湿原に自生し6~7月頃に開花します。私は尾瀬ヶ原や奥日光で会いましたが,花菖蒲ほど華やかではありませんが,高原の湿原に咲く清楚な美しい花です。
改良された花菖蒲は,500年間に300種ぐらいになり,長井系,江戸系,肥後系,伊勢系などと分けられています。花色はさまざまで紫の他に白,桃,青,黄などがあり,絞りなども改良されています。
ノハナショウブや花菖蒲はアヤメ科に属しますが,アヤメの他にカキツバタやシャガなどが含まれ,川や池のそばには西アジア原産のキショウブ(黄花)などが開花します。
お風呂に入れたショウブには花がありませんでしたが,同じ花菖蒲だったのでしょうか。
あれは花菖蒲ではなく,名が紛らわしいのですがサトイモ科の「ショウブ」でした。両者は葉が尖った剣のようでよく似ていますが,植物分類上は異なる科に属しています。ショウブの花は,長さ6~7cmの棒状のものの表面にごく小さい目立たない黄色の花が付き,花菖蒲の華やかな花とは全く異なります。
それではどうして5月の節句に,お風呂にショウブを入れるようになったのでしょうか。
はっきりしたことは分かりませんが,ショウブの葉にリュウマチ,神経痛,腰痛,血行促進などの薬効があると言われていますので,このことが原因かもしれません。
ショウブが属するサトイモ科には,コンニャクやクワズイモなどの他に,あの有名なミズバショウやザゼンソウが属しています。大変地味な雌雄の花を付けることが共通点になっています。子どもの日の植物も調べてみると興味が尽きません。(Y・H)
(2017年5月17日)