教育研究所
№672「葉の白化(半化粧)」
7月に入ると全国の水辺や湿地に緑の葉が白く変化した(白化した),高さ80~90cmの草が目を引くようになります。よく見ると葉の半分ぐらいが白化しているものが多く,中には全部白化した葉や1/3ぐらい白化した葉もあります。草の名前はハンゲショウ(写真1)と言い,漢字では半夏生や半化粧と書きます。さらによく見ると白化した葉の近くに,必ずと言っていいほど細長い穂状の白い花が開花しています。
この時期,葉は初夏の太陽を受けて光合成による養分づくりに忙しいはずなのに,なぜ光合成に不利な葉の白化を進めるのでしょうか。白化することにどんなメリットがあるのでしょうか。本当のところはハンゲショウ本人に聞いてみなければわかりませんが,次のように解釈されています。
ハンゲショウの花が開花する頃に合わせるように葉の白化は始まり,開花が終わると葉は再び緑化するところから,花の開花と関係あるのではないか。もしかしたら,開花を助ける働きをしているのではないかいうことです。考えられるのは,受粉を補助する働きすなわち送粉を助ける働きをしているのではないか,白化することにより花に代わって送粉者(昆虫等)を引き付ける働きをしているのではないと考えられています。確かにハンゲショウの1つの花は3~4mmと小さく,それらが集まって穂状になっても目立たない形態をしています。
ハンゲショウの名前は,開花を始める7月初めの季節を半夏生(7月2日頃)と呼ぶところからきているという説があります。また,葉がほぼ半分白化することを半分化粧すると解釈したという説があります。ドグダミの仲間ですので花の構造は,がくや花弁はなく,1枚の苞葉と6~7個の雄しべ,先端が4つに分かれた雌しべからできています。この小さな花が多数集まり穂状の花の集まりを作ります。
葉が白化する植物は,他にもあって猫が大好きなマタタビも同じことをします(写真2)。全国の山地の林の縁で木によじ登るつる性の植物です。開花は7月頃で東京都の高尾山あたりの山道を歩いていると,高い木をおおった緑色の葉の中に白化した葉を鮮やかに点々と見ることができます。葉の陰にはやはり花が開花しており,白化した葉が送粉者の誘因を助けて受粉に貢献していると解釈されています。
自然界の動植物は,生き残るために必死の工夫をしている様子が分かります。小学校3・4学年や中学校1学年の植物の学習時に触れられてはいかがでしょうか。(Y・H)
(2017年7月5日)