教育研究所
№674「新設校創りの思い出」
中教審答申や新学習指導要領は,教師の資質能力の向上とともに,予測困難な時代に生きる子供たちが時代の創り手となることを願い,「社会に開かれた教育課程の実現」をキーワードに,各学校の特色づくりを踏まえ,子供たち一人一人の豊かな学びの実現を求めています。
30年ほど前,第2次ベビーブームの中で,新しい都立高校の開校が相次ぎました。その時代に携わった『校長先生を囲む会』が,先日,開校時の同窓生や保護者,教職員の有志により開催されました。
年齢を感じさせない元気な校長先生を囲んで,生徒,保護者や教職員が力を合わせての学校づくりの思い出に,時が経つのも忘れるほど話が弾みました。
新設校スタートとしての一番の悩みは,将来につながる学校経営をどう構築し,生徒たちが,学力だけではなく人として豊かな学びをどう実現することができるかにあります。さらに,地域からの学校への評価は,大きなプレッシャーでもありました。
当時,校長は,新設校が成功する重要な要因として,『生徒のやる気』,『保護者の理解と協力』,『教員の熱意』の3つを掲げ,リーダーシップを発揮され,入学式,始業・終業式,PTA総会や職員会議等,機会あるごとに語られ,学校全体で取り組んでいました。
校風や伝統が整わない新設校は,学力も十分備わった生徒ばかりでない中で,校長は,『生徒の自主性を育てることが,生徒の可能性を大きく伸ばすことにつながる。そのためには,保護者の理解と学校との連携が必要である。』という信念を持っていました。
都教委や地域の支援・協力も力になりました。全国で初めて開閉式の屋根を取り入れたプールや各階に談話コーナーがある新校舎には,全国から多くの見学者が訪れてきました。その時,見学者が驚いたのは,どこで会っても生徒が大きな声で挨拶してくれるということでした。一期生の生徒たちの自覚や自主性が,「自分たちが学校を創るのだ」という意欲につながったと思っています。
保護者の方々は,PTA設立総会をはじめ,あらゆる行事,式典での協力やPTA活動の誠意溢れる仕事ぶりでした。思い出深いのは,初めての「公開授業」が,どしゃ降りの雨にも拘らず,沢山の保護者が熱心に参観されていたことです。保護者の方の力強さを常に感じていました。
また,最大の学校行事『体育祭』が終わり,暮れかけたグランドで,生徒たちがやり遂げた満足感・成就感いっぱいの様子で,体育委員を囲んで体育祭の総括を話し合っている姿を見守っている多くの保護者から,生徒たちに寄せる思い,学校に対する信頼がひしひしと伝わってきました。感激で涙ぐんでいる生徒たちを遠く,保護者の方たちとともに見ながら,私は,教員としての喜びを感じたひと時でもありました。
開設時の校長先生の熱意・誠意が通じ,『校長先生を囲む会』を開催してくれたのは,まぎれもなく当時の生徒たちでした。生徒たちの立派な成長ぶりを目の当たりにした校長先生の大変嬉しそうな笑顔に接し,私もその喜びと新設校創りの思い出を共有することができたのです。(H.H)
(2017年7月7日)