教育研究所
№698「他愛無いことの楽しさ」
川上未映子の「すべてはあの謎にむかって」(新潮文庫)をNHさんから勧められて読んだ。まず,忘れないうちにいくつかの感想を述べる。
この世には,気の毒で同情を禁じえない悲惨な犯罪の被害,胸が張り裂けそうな凶悪な事件,どうしてこのようなことをと理解しがたい軽犯罪などで溢れている。役所に勤務していた頃,猥褻事件,窃盗,誘拐未遂,盗撮など様々なことが起こり,これらを報告書にまとめる場面に遭遇した。その時,事故,事件,犯罪,不法行為などどのように表現したものか迷って,先輩から指導された「事案」という言葉でまとめ,上司の決裁を受けたことを思い出した(「点として(凛として,みたいな感じで)」を読んで)。
昔,職場を同じにしていた友人からメールが来た。内容は「道徳科」についてで,友人のまじめな研究ぶりに接し,久しぶりにまじめに考えた。ところで,そのメールを送信した全員のアドレスが添付されていた。よく見ると,共通の友人もいて懐かしく思うとともにこの人と交遊もあったのかと驚きの発見もあった。そういえば,ある研究家の開催通知にも同様なことがよくある。次第にBOKEてきてはいるが,個人情報の保護にもう少し真剣に考えなければと,つくづく思った。著者は,人前で風呂敷を広げられた状態だと表現している(「いつか風呂敷をたたむ手」を読んで)。等々。
私たちの周りには,ホウっておいてもいいようなそれでいて「どういうこと?」と気になることがたくさん転がっている。本書は,真面目なことから他愛無いことまで,2~3頁の短文86篇が,さりげなく語られていて,小腹のすいた時のお八つのような気分で読むことができた。私は全く興味ないが,普通だったら見ても聞いても決して口にしたり文章にりしない「尾籠な話(≒下ネタ)」もあからさまに書いてある。さすがプロの作家である。(YAYU)
(2017年8月31日)