教育研究所
№707「『食育』推進~八丈島の取り組みから~」
偏った栄養摂取や食生活の乱れにより,肥満・痩身傾向の増加,朝食を食べない子供の学習能率,体力や集中力の低下が指摘されています。
「食育」の基本は,家庭にあります。しかし,子供の食生活を十分把握して管理することが困難な保護者も多く見られます。
東京都では,地域の食に係る産業,自然環境の恵沢に対する子供たちの理解の増進を図るために,学校給食に地場産業を活用した食育に取り組んでいます。
先日,都立高校の副校長先生から,八丈島における地域・社会と連携した「食育推進」の取り組みについて話を聞くことができました。
八丈町教育委員会は,小・中学校の「食育」の目標として
1(あ)安全安心な八丈町の食材や文化,食に関する歴史を学ぶ。
2(し)しっかり朝食を食べて,規則正しい生活習慣を身に付ける。
3(た)楽しい食事をとおして,豊かな人間関係を築く。
4 (ば) バランスの良い食事で,すこやかな心と体を育む。
を掲げて取り組んでいます。
○八丈町の給食センターでは,食材に漁協女性部の協力を得て,魚加工品や八丈島でとれたレモン,切り干し大根,セロリ,ゴーヤなどを使った料理,おくら,や「もずくのスープ」等々,メニューを研究して,様々な調理方法を工夫しています。
特に,よく採れる「あしたば」は,かき揚げ,蒸しパン,ごま和え,野菜炒めに,ムロアジやトビウオはハンバーグ,スパゲティ,さつま揚げ等,子供たちの喜ぶ給食を調理しています。
子供たちに食材の印象が深く残るよう,学校に納品する時には,原料の魚がわかるように「トビウオ」などのサンプルを同封したり、またその素材の写真や資料を配布したりして,出前講座を行っています。
青ヶ島では,米粉入りのパンや糸寒天の胡麻酢和え,そして,小学校の畑で子供たちが作ったカンモ(さつまいも)を使って調理した給食を喜んで食べています。
○八丈町立大賀郷中学校では,島の特色を生かした郷土料理(魚料理・島料理)の学習や郷土芸能(八丈太鼓)の学習に取り組んで,郷土への愛情を深めています。
『食に関する指導目標』の中に,「食事の重要性,喜び,楽しさを理解」,「心身の健康」,「食品を選択する能力」,「食物を大切にし,生産に関わる人々への感謝の心」,「食生活のマナー等の社会性」,「食の文化や歴史を理解し,尊重する心」をあげて,食育の授業や給食指導を中心とした食育の推進を通して望ましい食習慣を確立する教育活動を進めています。
家庭科の授業では,八丈島でとれた肉,野菜や魚の調理実習を,総合的な学習の時間では,さつまいもの収穫,郷土料理教室等を行い,食に対する指導を行っています。
また,毎月「食育だより」を発行し,八丈町の食材,食文化や食に関する歴史を紹介しています。
東京都の各学校でも食育に関しての様々な取り組みを行っていますが、その中でも,八丈島における「食育」推進の教育活動を学び,改めて,学校は,家庭や地域と連携して子供たちが食に対する関心や理解を深めるための体験活動や交流活動を行うとともに,各教科で学校給食を生きた教材として活用することが大切であると強く感じた次第です。(H・H)
(2017年9月14日)