教育研究所
№762「熟練工の不足」
日本の匠の技(わざ)が危機的状況にあるということである。もう少し説明すると,日本の「ものづくり」を支える熟練の技を持った「熟練工」が不足してもう限界だというのである。今の若い人が,中小企業の熟練の技を要するような仕事に集まらず,後継者が育たないのだそうだ。
そこで,ロボットシステムインテグレーター,つまり,熟練工不足,生産性向上に対応するものとしてロボットを導入しようというのである。経産省や日本ロボット工業会が主導しているようだ。
これまでも,企業の大小にかかわらず,安全,正確,均質,労力軽減などを勘案してロボットや機械化が進められ,多くの成果を収めていることは承知している。このこと自体は,進歩の一部であって,当然のことである。産業革命以来の進歩・進化の流れの上にある事柄である。
と思いつつも,職人が手で触っただけでミクロンの違いを判断して調整しながら素晴らしいものを生み出していく「職人技」が,ロボットに取って代わられることには一抹の寂しさを感じる。とともに,微妙な感覚に支えられつつ進歩してきた伝統と進化・創造の流れが途絶えることに不安すら覚える。
多くのことをロボットに頼るようになって,「人間とは何か?」を改めて問い直す必要がありそうだ。「人間とは,ロボットの養われる(飼われる)ペットである?」(人間とは考える葦である・パスカル)ということになってほしくない。 (YAYU)
(2017年12月27日)