教育研究所
№767「バンザイ!中学生」
将棋,フィギュアスケート,卓球,体操,柔道,そして小説,・・・と,中学生の活躍が目に付く。素晴らしいことである。ベテランを脅かす若手の台頭が目覚ましいということは,世の中が平和で,希望があるということだ。
児童虐待(なぜ,我が子を?),子供の貧困(日本は16%だという),子供の誘拐・傷害・猥褻行為などなど,言葉で形容しがたい事件・事故が頻発している。日本はどうなってしまったのか?
高齢者や弱者が困っているのに関心を示さない大人や若者も(勿論,温かく親切にしてくれる子供・若者・大人もかなりいます!)少なくない。2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて,アスリートの講演を聞かせるよりも,日本の平和,本来持っている日本人の親切さなどを,来日した外国人が実感できるようにするほうが大切なのではないでしょうか?
ところで,今,私は「さよなら,田中さん」(小学館 本体1200円)を読んでいる。驚くなかれ,著者の鈴木るりかさんは,平成15年(2003年)生まれの14歳の時にこの小説を書いたと知って,びっくり仰天した。
小説の内容は,5つの短編「いつかどこかで」「花も実もある」「Dランドは遠い」「銀杏拾い」「さよなら,田中さん(中学同級生の生田中花実(多分著者であろう)と三上信也とそれを取り巻く友だち,家族とのやり取りが現実的でしかも心を打つ物語である)」からなっている。恐らく自分(実体験)または自分に近い処(実際に目にした間接体験)のことを著したものであろうが,ものの見方・考え方・洞察力,社会の観察の仕方,心情の読み取り・受け止め方,語彙力,ものの言い草など,これが「本当に?」中学生の書いたものかと,ただ舌を巻くばかりであった。戦後の日本には似たような環境で育った子供が多いので,懐かしい世界へタイムスリップしたようだった。まさにスーパー中学生で,これからも自分流の小説を書き続けて,読者を「新しい世界(鈴木るりかの世界)」へ誘って欲しいと期待している。(H・K)
(2018年1月11日)