教育研究所
№831「『フリー』と『振り』」
会話のない我が家のある日の事,昔は少し可愛かった老妻「あなた,ツンデレって知ってる?」と珍しく聞いてきた。今もそれなりに格好いい私は「ツンドラなら知っているけど!?」と応じた。老妻「それが私も知らなかったのよ,電子辞書で調べたら,はじめはツンツンしていたのに,慣れるとデレデレ甘える人の事なんだって!」ということだった。
今の若者は,なんでも省略して,隠語のような言葉でコミュニケーションをとっているようだ。とはいうものの大人も結構使っている。NHKですら「シブ5時(渋谷=NHKの午後5時のニュース)」や「アサスポ(朝のスポーツニュース)」,もっと驚くのは「現在の空模様」を「今の空模様」さらに「今の空」そして「今空」究極の「イマ・ソラ」と放映している時代である。これくらいの遊びがあってもいいかもしれない。
ところで,老人が入院している病棟で,相当に高齢の患者Aさんと看護師Bさんの会話を聞いて,思わず笑い転げそうになった(もちろん,失礼なので,ぐっとこらえたのでご心配なく)。
患者Aさん「早く,歩いて散歩したいよ」,看護師Bさん「フリーになるには,点滴のチューブが外れないとだめなのよ。それまで我慢してね」,患者Aさん「そう,どんな振りをすればいいんだい?」と。看護師Bさんは,「自由に動き回れる」という意味で「フリー(Free)」といったのに,日本語専門で人生を過ごしてきた患者Aさんは「フリー」を「振り(身振り)」と捉えたようです。
そのうち,今の普通の会話は,古典語辞典に載っているようなものになってしまうのかもしれない。普通の日本語の会話の通じる日本であってほしい,そのためにも「お笑い番組」以外では,なるべく省略語(必要性,子供・若者世界を否定するつもりはない)は避けてもらいたいものである。 (H・K)
(2018年4月23日)