教育研究所
№843「ツツジの仲間たち」
4月も下旬になると住宅地の道路も大きな幹線道路も両脇はツツジの花の開花に華やぎます。紫紅色の花が主流ですが最近はピンクや白色の花が混じり一層華やかです。5月になり,これらの大きめのツツジの花が終わると,やや小さく明るい朱色のツツジが道路の両側を彩ります。
4月に開花する大きいツツジは,山梨県以西~岡山県,四国の低山に生育する「モチツツジ(写真1)」を栽培品種として改良したツツジです。代表する品種は紫色の「オオムラサキ(写真2)」ですが,異なる花色の品種も多数生まれています。特徴は花が大きく外側のがく裂片に触るとねばねばした感触があります。このねばねばはがく裂片に生える毛の先から粘液が出ていることによります(写真3)。一度試しに触ってみてください。
5月に咲く小さく明るい朱色のツツジは,「サツキ(写真4)」の栽培品種です。野生のサツキは神奈川県以西~近畿地方,中国,九州の太平洋側の川岸の岩上に生育しますが,稀にしか見ることができません。野生のサツキから江戸時代以後多数の栽培品種が作出され,現在では道路や公園,庭園等に植えられています。5月に咲くのでサツキと呼ばれます。ツツジの大部分は4月に開花しますが,サツキは5月に開花するので利用価値が高いと言えます。
モチツツジの仲間もサツキの仲間もがく裂片と花弁が5枚,雄しべが5~10個,雌しべが1個,花弁は漏斗状で最上の花弁に昆虫を誘引する華やかな斑紋(写真1,2)があります。雄しべの花粉を作る袋(葯)は2個で1セットですが,葯の先端部に穴が開いて花粉を出し昆虫に付着します(写真6)。
ツツジの仲間は大きく分けると上の花弁が漏斗状に開く仲間と,もう一つ釣り鐘型で大きくは開かない仲間があります。道路や公園,庭園,家庭の庭等に植えられている「ドウダンツツジ」の仲間たちです。釣り鐘型には,筒状のもありますし壺状のもありますが皆この仲間に入ります。この仲間に「アセビ(馬酔木)」という種がありますが,文字通り有毒で馬がふらふらするほどの毒の威力があると言われています。牧場などに行きますと牛や馬等はこのアセビをちゃんと食べ残しています。
ドウダンツツジやアセビは白色ですが,ベニドウダンやサラサドウダン(写真5)等は朱色の釣り鐘型の花が多数集合して開花しますから,大変美しい情景を見ることができます。このドウダンツツジの仲間にもう一つ面白い特徴があります。それは釣り鐘型の花の中に10本の雄しべがありますが,雄しべの葯の背中に2本のひげを付けているのです(写真6)。このひげはどんな機能を持っていて何の役に立っているかは今のところは分っていません。人間のひげと同じように役に立っているのでしょうか。
ツツジの仲間は,花弁が合着していますので双子葉植物の中では進化した植物として考えられています。最近のAPG系統分類体系では,ツツジの仲間にギンリョウソウやイチヤクソウまで入り驚くばかりです。
小中学校では,4月~5月の植物教材として,ツツジの仲間を小学校5学年や中学校2学年の花のしくみの学習に取り入れてみてはいかがでしょうか。(Y・H)
(2018年5月21日)