教育研究所
№844「検閲≒基準や規定に合っているかどうか調べること」
検閲は、日本国憲法で、[集会・結社・表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密]第21条集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。②検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。と、禁止されている。
これは、日本が戦前(1945年以前)に、検閲を行い国民の「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」を奪ってきた反省に基づくものである。
辻田真佐憲著「空気の検閲―大日本帝国の表現規制」(光文社新書)を読むと、戦前の検閲のすざましさが分かり、21条②の大事さが再確認できる。
著者は、「エロ・グロ・ナンセンス対検閲官(14事例)」「世間と共振する検閲(13事例)」「植民地の独立運動を抑圧せよ15事例」「聴く検閲、観る検閲(脚本、映画、放送、レコード)14事例」「日中戦争と忖度の活用14事例」「太平洋戦争と軍部の介入15事例」を通して、検閲を「繰り返される忖度の歴史」として、その源流を探り、不当性を事例を通して解き明かしてくれる。
ところで、文部科学省の教科書検定は、学校教育法第34条小学校においては、文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない。と、規定されている。では、検定は検閲に当たらないのかということになるが、「内容が正確かつ中立・公正で、...全国的に一定の水準が確保されていること、児童、生徒の心身の発達段階に応じたものであることが要請される。...文部大臣が行う検定は、その要請を実現するために行われるものであって、...合理的で必要やむを得ない限度のものというべきであるから...憲法第21条、23条に違反しない」(最高裁平成9年8月29日)となっている。
したがって、検定に合格した教科書は全て内容が「正確、中立、校正」であることが、文部科学大臣によって保証されたものである。そこで、どの教科書を使うかどうかは、児童、生徒に「質の高い学習、質の高い学力」を実現する授業に役立つかという視点に立って「良い部分」の多いものを選択するということになろう。(K・H)
(2018年5月25日)