教育研究所
№922「共に学び 共に進む 『未来を拓く』東京都立竹台高等学校」
『社会全体で子供の「知」「徳」「体」を育み,自ら学び考え行動する力や社会の発展に貢献する力を培う』。これは,東京都教育委員会が,「全ての子供たちが,変化の激しい社会の中で自立して生きていくとともに,我が国や社会を発展させていくために必要な資質や能力を身に付けさせる教育の在り方」に掲げた今年度の教育ビジョンの基本理念である。
この実現に向け,「個々の子供に応じたきめ細かい教育の充実」,「世界で活躍できる人材の育成」,「社会的自立を促す教育」「子供たちの健全な心を育む取組」,「体を鍛え健康に生活する力を培う」,「オリンピック・パラリンピック教育の推進」等に取り組んでいる。
今,小・中学校の新学習指導要領への移行を始め,高等教育,大学入試が大きく変わろうとしている。そのような状況の中,東京都立竹台高等学校(以下竹台高校)は,東京都教育委員会から平成29・30年度「人権尊重教育推進校」,平成30~32年度「アクティブ・ラーニング推進校」,平成30・31年度「パワーアップハイスクール」の指定を受けた。また,教育活動のさらなる充実を図るため,平成30年度に「上級救命講習実施校」として,知徳体のバランスのとれた人間を育成する学校を目指している。
先日,竹台高校を訪問し,八百板真弓校長先生から今年度の教育活動への取組と生徒たちの様子を聴く機会を得た。
創立78年の歴史を有する竹台高校は,「昭和55年度人権尊重教育推進校」の指定を受けてから今日まで,その伝統を引き継ぎ,全校での人権教育講演会や選択科目「人権」等を通じ,高い人権意識の育成に取り組んでいる。
また,ダンス部・バトントワリング部・吹奏楽部は,地域と連携し荒川区主催の行事などに参加している。平成33年(2021年)夏には新校舎も完成する予定である。
今年度は,学習指導要領の改訂や大学入試改革の動きを踏まえ,PDCAサイクルに基づくマネジメントシステムを生かして,生徒が主体的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」の視点に立った指導や指導資料の研究開発を推進し,全都立高校に向けて成果の普及を図っているところである。また,生徒の体力の向上や心身の健康や体力の増進を目的とした取組の充実を図るため,「パワーアップハイスクール」として,生徒一人一人が健康に生活する力を培う体力づくりを積極的に行い,運動・スポーツに親しむ元気な生徒を育んでいる。
八百板校長先生の学校経営力と全教職員の指導力を結集して,都立高校としてのスケールメリットを生かし,都教育委員会の様々な事業,次世代リーダー育成道場(カナダ,オーストラリア留学),東京グローバルユースキャンプ,都医学研フォーラム,東京都英語村※等に,生徒を推薦,参加させるなど,普通科中堅校として,多様な生徒の学力向上及び生徒の希望する進路実現に向けた教育活動を進めている。
※東京都英語村(TGG):教育委員会が民間企業と連携して,「英語で学ぶ」体験型英語学校施設「TOKYO GLOBAL GATEWAY」が,今年9月に開設した。海外で生活しているような英語を使用する楽しさや必要性を体験できる。今年度,1年生全員が,日頃培った英語力を活用し,より高きを目指す機会として位置付けている。
竹台高校は,変化の激しいこれからの社会を生き抜く,知徳体のバランスのとれた人間の育成を実現するため,次の①から⑤の教育目標を掲げている。
① 人間性豊かで,互いの人格を尊重し,社会の発展に貢献できる人材を育成する。
② 人権尊重の理念を基盤に,生徒が高い「規範意識」をもち,「感謝・礼儀・思いやり」を励行する。
③ 確かな学力を向上させ,自ら学び考え行動する,個性と創造力豊かな人間を育てる。
④ 特別活動,部活動の振興を通して,生徒の心身を鍛える。
⑤ 生命尊重と安全を常に心がける人間を育てる。
「竹台で未来を拓く」
教育目標を実現するために,次のような教育活動に取り組んでいる。
〇「一人ひとりの確かな学力」の定着を図ります
―これからの時代に必要な力を育成するために―
1.コミュニケーションの重視した指導内容,生徒の学力に応じたきめ細かな指導の実現
・授 業:「アクティブ・ラーニング型」,主体的・対話的で深い学びの実現に向けて,考える授業,発信する授業
・習熟度別授業:英語表現Ⅰ, コミュニケーション英語Ⅱ
・少人数授業:体育,芸術,家庭総合(3年選択)
・多様な選択科目:吹奏楽,ペン習字,フランス語,中国語,朝鮮語,人権
2.充実した学習環境
・講習,補習:放課後,土曜日,長期休業日中50講座以上
・自習室の開設:放課後(午後6時30分まで)・土曜学習室(大学生による学習指導)
3.多様な学習支援,資格取得
・高大連携:明海大学教育連携協定締結校
・在京外国人生徒の学習環境の充実:1学年取出し授業,全学年放課後の日本語教室
・東京都英語村への参加,スタディサプリ,Classiの活用(学習支援,進路指導)
・語彙,読解力検定(全生徒受検),漢字検定,英語検定,パソコン検定(全学年推奨)
・基礎学力の向上 ・自主学習習慣の確立 ・自主学習時間の伸長 ・週末課題
・全校コンテスト:漢字コンテスト,英単語コンテスト,
4.「生徒による授業評価アンケート」(年2回実施) → 授業改善
〇「社会性」を身に付けます
―心豊かな人間性を育むために―
・人権意識の向上:講演会の実施(人権講演会,健康教育講演会)
・キャリア教育の充実:進路意識調査,模擬テスト実施,同窓会によるキャリア教育講座
・小論文,面接指導,社会的・職業的自立支援教育プログラム事業活用
・地域のイベントへの参加
〇「主体性」を育てます
―豊かな人間関係を築くために―
・部活動:全国大会で優秀賞を獲得した吹奏楽部はじめ29部
・特別活動(学校行事等)の推進
竹台高校は,平成28年度入学者選抜から在京外国人生徒対象の選抜を実施し,4月入学15名,9月入学3名の枠があり,現在,中国,タイ,ネパール等,8か国の生徒が在籍し,先生方は生徒にとって第2言語である日本語の指導に意を用いている。また、生徒たちは,偏見や差別意識をもつことなく,外国籍の生徒との交流し,互いの文化や習慣に触れ,理解し合い,共に生きる社会の在り方,より望ましい人間関係を築いて共に生きていこうとする態度を既に身に付けている。
八百板校長先生からそのようなお話を聴きし,私は改めて「人権尊重,社会貢献の精神」の育成で,学校教育の果たす役割が極めて重要であると認識した。
また,積極的に東京都教育委員会の様々な事業に生徒を推薦,参加させ,生徒一人一人の良さや可能性を引き出し伸ばすとともに,社会的自立を促す教育活動は,校長先生のリーダーショップはもちろんのこと,一緒に取り組む先生方の実践的指導力の素晴らしさに大きな感銘を受けた。
竹台高校に入学した生徒たちは,充実した学習,学校行事や部活動や様々な体験活動等の学校生活を通して,知徳体のバランスのとれた「社会性」「責任感」「思いやり」のある生徒として育ち,自らの進路を切り開き,社会の発展に貢献できる力を身に付けて巣立っていくものと確信している。
(Y・Y)
(2018年11月21日)