教育研究所
№924「え!随筆も書くの?」
牧野富太郎といえば独学で植物学に取組み,理学博士&学士院会員で,植物分類学の世界的権威である。我が家の書棚にも牧野先生が編まれた植物図鑑が十数冊ある。(なぜかって,我が家の後期高齢者の妻が若かりし頃植物の勉強をしていたので,その名残り)。ところで,その牧野先生が「牧野植物随筆」(講談社学術文庫)を出版しているのには正直驚いた。奥付を見ると,昭和22年(1947年=22+1925)に出版したものの文庫化ということである。
牧野先生らしい論理的(理屈っぽい)で,論証的(証拠を挙げて),自筆の図版を29もつかい,丁寧に書いている。読み慣れると,植物についてのあれこれ(裏話,イチャモンなど)が分かって楽しくなってくる。
「馬鈴薯の名称を断乎として放逐すべし(★人を馬と言ったら怒るだろう,それなのに,ジャガイモを馬鈴薯というのはけしからん...)」「ハマナスか,はたハマナシか」「わが国キャベツについての名の変遷,つけたり花椰菜」「植物学者によって歪曲せられたツボスミレの名(★植物学会で信じ切っているツボスミレは間違いで,タチツボスミレのことである。...)」「ナンジャモンジャの真物と偽物」など25の植物が取り上げられている。
私は,ジャガイモが好物,スミレの栽培が趣味なので,★の話がえらく印象に残った。(H・K)
(2018年11月27日)